2015年10月20日火曜日

秋の日の熊谷守一つけち記念館

 家人がお気に入りで、以前から出かけてみたかった中津川市付知町にあった熊谷守一の美術館が、「熊谷守一つけち記念館」としてリ・ニューアルされたとの話を耳にし、さっそく親しい友人共々出かけました。

 熊谷守一は1880年(明治13年)中津川市付知町にうまれた極度の芸術家気質で「画壇の仙人」と呼ばれた日本画家です。

 70歳半ばを過ぎ、脳卒中で倒れて以降、故郷のこの地に帰って小さな家に住み、自然を愛し文化勲章や勲三等叙勲を辞退するなどまさに仙人、、、、

 一方でチェロやヴァイオリンなどを奏でる音楽愛好家で、作曲家の信時潔とは彼の子息と信時の娘が結婚するほど親しい間柄でした。


 この日はまさに雲ひとつない絶好のお出かけ日和で、我が家の天使たちに見送られて、いざ出発です。

 中津川ICからは国道257号線で木曽川を渡り、さらに256号線を下呂に向けて北上し、約45分で到着しました。

 思っていたより小さな建物でしたが、端正ですばらしい記念館でした。上写真は入口のポールです。

 そして建物正面の白壁には彼が好んでよく描いた猫がアレンジしてありました。
 さらに入場券がこの猫の絵の栞だったのは思いがけず、嬉しいハプニングでした。
 記念館内は撮影禁止でしたので、その様子をインターネットの記念館ホームページより以下に転載しました。
記念館ホームページより


記念館ホームページより

  1階の最初の部屋は熊谷守一の東京美術学校時代から年代を追ってフォービズムとなり、晩年のシンプルな抽象画風に変わっていく様子が展示されていました。


記念館ホームページより

 次の部屋は今私たちがよく目にする熊谷守一の世界が展開されます。

 熊谷様式と言われる極端なまでに単純化された形それらを囲む輪郭線、そして平面的な画面構成抽象度の高い具象画スタイルの多くの作品に圧倒されました。
記念館ホームページより


 2階には晩年(97歳没)に近い作品が多く展示してありましたが、どの作品も素晴らしい物ばかりでした。






 左の写真は2階の廊下で、壁には熊谷守一が愛した写真家、藤森武が撮影した写真がズラリと並んでいました。


 この廊下の突き当たりにある窓から外の景色を撮ったのが左写真です。
 前に見えるのが付知川で、対岸(東側)の町並み、山々がからりと晴れた秋空のもと何か心安らぐものを感じさせてくれました。

 右写真は、帰り際に気がついた記念館テラスの敷石です。

 花崗岩で敷き詰めてありますが、色の組み合わせといい形といい熊谷守一の作品イメージぴったりです。いづれ優秀なデザイナーの作なのでしょう。

 熊谷守一の作品はあまり大きなものが無いようで、このことがこの可愛らしい記念館の中身を質的にも量的にも十分に密度の高いものにしていると感じました。

 ということで充実した時間を満喫しました。

 少し早いですが、そろそろ昼食を、、、、ということで以前この地の旧友に教えられた「追分茶屋」という国道257号線沿いの饂飩屋に立ち寄りました。

 早速いつもの定番で「梅ころ冷やし饂飩」の天麩羅つきをオーダーです。ここの饂飩は目の前でご主人が打ってくれており美味しいのですが、なにせ量が多くて、、、、小盛りもあるそうです。

 イッパイになったお腹を減らすため?これまた近くの苗木城址を訪れることにしました。

 苗木城は鎌倉時代の初期に後年女城主で名高い岩村城の遠山氏が築城したもので、紆余曲折はあったものの明治になるまで城主遠山家が12代も続いたのはなかなかのものですが、禄高が全国城持ち大名中最下位の1万石ということでも知られています。

 木曽川を170mもの足下に見る自然の大岩の上に立つ天守閣(左写真)は今はなく、代わりに建っている展望台の柱組が見えています。(右下はその拡大写真で歩いている人が見えます)

 そしてその場所に立って見下ろすと、大矢倉跡の石垣があたかもマチュピチュの遺跡のように見えました。

  
 左下写真は天守の石垣上から恵那山を遠く眺めたところです。

 足元には木曽川が流れ、秋を告げる柿の実の色も澄み渡った空に映えて美しく、この場所は春には代わって右側の桜が咲き、私の好きな景色なのです。









 帰路の途中、案内板にしたがってNHKの朝ドラ「花子とアン」で仲間由紀恵が演じた「柳原白蓮」本人が昭和28年この地を来訪した時詠んだ歌の歌碑に立ち寄りました。



 写真では光の加減で露出が定まらず、もちろん実際に肉眼で見てもはっきりしませんでしたので、帰宅後調べて彼女の直筆色紙を並べておきます。

 「城あとに やかたも人も いまなくて
         かたるは何ぞ 山鳥の声」


 最後に中津川の市内に出て、お土産を求めついでに、この地出身の画伯である前田青邨の生家に立ち寄りました。

 中津川といえば栗きんとんですが、今では雨後の筍のごとく多くの店で売り出しています。このヤマツ食品でも栗きんとんは売られていますが、きんとんに絞る前の栗のペーストを売っていますので、これがお目当てだったのです。

 そしてこの店の二階が「前田青邨記念ギャラリー」である前田館になっているのです。

 ここはそれほど広くはないのですが、手紙を始めとして彼に関する多くの資料が何気なく展示してあります。 1階のお店で売り子さんに「2階を見せてもらえますか?」と声をかけると「はい、どうぞ」と照明のスイッチを入れてくれるという知る人ぞ知るという場所です。(もちろん無料)

 そうこうしているうちに帰途につく時間になってきました。

 今回は「熊谷守一つけち記念館」を訪れ、あらためて彼についてじっくりと時間をかけ、理解を深めることができましたし、昼食、苗木城址、前田館などもあわせ素晴らしい秋晴れにも恵まれ中身の濃い一日でした。

 ほんに楽しい一日だったにゃ~

0 件のコメント: