2017年5月6日土曜日

急ぎのミシン修理

 連休の真っ只中、ミシンの修理が持ち込まれました。
 左写真はキャリング・カバーをつけた状態ですが、とても40年以上も前のものとは思えないほどすばらしいデザインです。そして持ち上げるとずっしりと重く、まさにミシンの名の由来であるマシーン( machine )の質感そのものです。





 右上には「SINGER」とあります。もともとシンガー社(Singer Corporation)は、19世紀の半ばに設立されたアメリカのミシン製造会社で、日本では戦前に日本製鋼所と合弁で設立されたシンガー日鋼(株)(現在は解散して別会社)が製造・販売しており、持ち込まれたミシンに前述した感想を持ったのも納得できました。







 右上写真はアンティーク・ミシンとして人気の SINGER ミシン、左上は持ち込まれたミシンの「使用の手引き」冊子にあるシンガー日鋼の表示です。

 キャリング・カバーを取り去ると右写真のような本体が現れましたが、そのデザインの洗練さに再度驚きです。アルミ・ダイカスト?をベースに樹脂パネルで全体を覆う構造になっています。使いやすさ、機能性、安全性、耐久性などが凝縮されているのがわかります。
 モデル名は「mon ani Lune」とありました。

 ところで不具合は?ときいてみると、、、縫いのピッチがまったくコントロールできない、、、とのことでした。

 たしかに、左写真のピッチ・コントロールレバーを動かしてみましたが少し手ごたえが無いようで、内部のリンク機構(この時代はまだ電子制御ではない、、、)がおかしくなっているのではないかと見当をつけました。

 さっそくカバーをはずしての分解にとりかかりましたが、これが思った以上に大仕事でした。
 よく考えられた家庭用耐久消費財だけあって簡単には分解できません。まるで寄木細工のカラクリ箱を開けるようでうまく隠されたビスを探し、時には正しい分解順序に戻るために再度組み立てたり、また時には力任せ?でようやく内部が点検できるようになりました。

 右上写真ははずした部品と何種類かのビスです。今回は急いでいたので分解過程をデジカメで記録せず、あとで後悔しましたが、このひと手間は必須です。

 左写真中、①は前述のピッチ・コントロールレバーで、これを左右に動かすことで②の歯車(白い樹脂歯車の奥の少しだけ大きな鉄製の歯車)が回転し、これと噛み合った③の歯車を動かすようになっていました。
 よくチェックしてみると③の歯車と軸が緩んでおり、レバーの動きが伝わっていませんでした。


 六角レンチで③の歯車を右写真のようにしっかり固定し(2箇所)出来上がりです。

 この機会に再度ミシンのメカニズムを観てみましたが、きっと多くの技術者が十分な時間をかけてつくりあげたのでしょう惚れ惚れとするようなすばらしさでした。(左写真)

 ただ今回緩んだネジや組み立て用のネジにロック剤やスプリング・ワッシャーなどを使っていなかったのは何故か?の疑問が残りました。(ユーザーと販売店の修理屋さんが仲良しになるため?)

 右写真が結果の確認です。
 縫い目のピッチは上から中、広、狭となっており無事完了です。

 今回は少し甘く見て、初物なのにあまり深く考えずにいきなり分解を開始しましたが、やはり計画的にデジカメなどで経過を記録しながら進めることが必要だと思いました。

 そういえばかつて新入社員時代のエンジン分解実習のとき余ってしまったビスをこっそりポケットに入れて帰ったやつがいたっけ、、、、

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