2012年6月23日土曜日

ろうそく能にでかけました (狂言・浦島 と 能・清経 (音取))


 ここのところ、はっきりしない梅雨模様ですが、久方ぶりに観能に出かけました。
 ここの能舞台ではロウソク能は2年に1回くらいとかで、かつ、狂言の「浦島」は戦災で台本が消失していたものを明治13年上演時の記録をもとに平成11年に復曲上演された野村又三郎家秘伝の演目とか、、、、、
 また「清経」はロウソク能にくわえて、「音取(ねとり)」入りということで、いろいろ楽しみにしていました。
 よくある薪能(たきぎのう)は夜、野外で上演されますが、ロウソク能はやはり屋内が多いようです。
 開演に際し、舞台裏からの調べ静かに流れる中、舞台上に手蜀を持った裃姿の人が二人、静かに登場して、橋掛かり、舞台など12本のロウソク次々と灯を入れていきます。(図中の○印)

 客席の照明はほとんどなく、舞台上も照明は30%にまでおとされるとか、、、、幽玄の世界が垣間見え、いよいよ始まりです。

復曲狂言(和泉流浦島
  シテ 宿老浦島  野村又三郎
  アド      奥津健一郎
  アド 亀の精   松田 高義

 物語は、通常の「浦島太郎」そのままですが、登場してくるのは「宿老浦島」とあるように足腰の曲がった老人です、孫が捕まえた亀を説得して海に還してやるのですが、そのときに「腰痛を治して欲しい、、、」と頼みますが、その後あらわれた「亀の精」にもらった玉手箱のけむりで堂々たる若者に変ずる、、、、、というものです。ストーリーがわかっている分、笑いはないですが、楽しく観られました。通常のおはなしは老人になってしまい、何か裏切られた感じが否めませんが、ここでは逆の展開でめでたさを表現しています。老人から若者に早変わりするのが見どころですが、登場するときのヨボヨボの演技が結果をいっそう引き立たせます

能(喜多流)清経(音取)
  シテ 経の霊 塩津 哲生
  ツレ 清経の妻  佐々木多門
  ワキ 粟津三郎  森  常好

    藤田六郎兵衛

 この能は、いわゆる「神男女狂鬼」の分類でいけば、2番目つまり「修羅物」には違いないのですが、3番、4番の要素がシッカリはいっており異色だと思います。かつ、ツレ清経の妻がワキ粟津三郎より重きを成しており、いっそうその感が強まります。ある意味、ロウソク能にぴったりかも、、、、

当日のパンフレットよりのあらすじ 平清経(清盛の3番目の孫)は豊前(大分県)柳ケ浦で入水した。その形見の黒髪を持って粟津三郎(ワキ)が清経の妻(ツレ)を訪れる。三郎から投身の様子を聞いて涙にくれる妻の枕元に、清経の霊(シテ)が現れる。
 白分を残して自殺した清経を責める妻に対し、清経は事情を語って納得させようとする。神にも見放され、望みを失ったので、横笛を吹き、今様を謡って入水したと述べる。
 修羅道の苦しみを見せつつも、   は最期に念仏を唱えた功徳で成仏したと語って消えていく。

 今回は、笛の名手だったといわれる清経の亡霊が、笛の音にひかれて登場する特殊演出「音取(ねとり)がもちいられました。揚幕のかなた(当然見えない)から「橋がかり」を経て「舞台」まで、清経の亡霊が、あらかじめ舞台前方に移動した笛方(図参照)の吹く秘曲に導かれて、曲がとまると足の動きも止まり、曲が始まるとまた動き出す、、、、といったやりとりが、まさにこの世のものとも思えないような雰囲気をたたえながら進行する様を十分に堪能できました。

 今回の演目は大河ドラマ「平 清盛」にちなんでいましたし、私自身、かつて謡をやっていた経験も思い出され、充実した時間を持つ事が出来ました。





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