本来はHP410 Voltmeter (下写真はHP社のカタログより)で使用すべきものなのですが、手元になく、不遇をかこっていました。

ところが最近になってふとしたことからこの本体が入手できました。保証なし、ジャンク状態ということで、全体はホコリまみれでメータ・パネル面はコーティングが剥がれかかっており、測定ケーブルもドロドロで、右写真とは雲泥の差でありました。
今回やってきた HC410C は HC410 シリーズの最後のモデルで、最も洗練されたものです。少し調べてみるとシリアル・ナンバーにYの文字が入っていることと、電源トランスの入力がAC100Vのみであることから、1963年に創立された横河ヒューレット・パッカード株式会社の製品で、1965年ころのものであることが推測されます。

メーター面のコーティング剥がれが起こるのは初期のものらしいので、マニュアルもそのように選択しました。

右図は心臓部にあたるチョッパー増幅器です。
この部分は直流増幅器なので、当時の技術ではドリフトがなかなか抑えられず、我々の若き時代によく使ったレコーダーや、センサーの増幅器にもいろいろなタイプのチョッパーが使われていたのを思い出します。
キモは橙色で示した四角部分のチョッパー素子の生死です。ネオンランプの断続光をCDSセンサーで感知するタイプなので、暗くして観察してみました。
上下左右のパネルをすべて外し、内部の清掃を行った後(クモの巣もありました)、の下面の写真を右に示します。

改めて通電し、しばらく様子を見てから、電圧チェックを行いました。
右写真は、上から見た様子です。カードが2枚抜いてありますので、そのソケットが見えています。

左がそのうちの1枚で、先にチェックした、チョッパーが搭載されている、メイン基板です。チョッパーが上部にあり、そのすぐ下にシールドケースを被った真空管 (12AT7) があります。
下写真がもう1枚の、各種レンジのキャリブレーション基板で、半固定ボリュームがたくさんついています。

前述したように、測定用のリード線などもかなりな劣化が見られますし、DCV 用のテスト棒はオリジナルとは異なり、中に入っているはずの1ⅯΩの抵抗もありません。

さっそく手持ちのテスト棒を探し出し、1ⅯΩの抵抗を直列に入れました。
このモデルでは、リード線が本体直付けになっています。これは功罪あると思いますが、左写真のように、長年の使用に耐えかねて、切れかかっています。
少し短くなりますが、再度取り付けなおしました。
このような電圧計の信頼性は、増幅器もさることながら、横パネルを取り去って見える、ロータリ・スイッチと各種の分圧抵抗だと思います。
ロータリ・スイッチにはステア・タイトがつかってあるようですし、この部分の抵抗器はすべて誤差1%のもので当然ですが、60年近くたってもほとんど狂いが目立たないのはさすがです。さらに数回スイッチを回すことでいわゆる接触不良はほとんど感じません。
左写真は前述のメータ・パネルで、劣化した表面こーてぃんげが剥がれて浮きあがり、メータ指針がところどころひっかっかる状態です。
幸いにも目盛や文字はコーティングの下にあり、写真のように刷毛でなぞってやることでかなり除去できました。色のムラは私のシワと同様に長年の勲章ということで、、、

このメータを分解する際に、左写真のようなシールを発見しました。(破いてから気が付いた)
これによれば、メータの一つ一つに校正しながら目盛った、、、、ということらしいです。なるほど、そういった時代だったわけです。

あとはマニュアルに従って、簡単な校正をを行ってしばらく通電し、エージングをしてみました。
たまたまこの個体がよかったのか、かの時代のヒューレット・パッカードの実力なのか、すべてのファンクションにおいて、ゼロ点はほとんどドリフトしませんし、レンジを切り替えてもゼロ点と測定値のズレもほぼありません。

右写真は、パワースイッチです、オンになれば内蔵のネオンランプが点灯して一目でわかりますが、ランプが故障した時も押しボタンに印刷された模様でわかるようになっています。
こういったギミックが私は好きです。
、、、、ということで、幸運にもACプローブ(MODEL 11036A AC Probe)とペアになるべき HC410C が入手でき、状態も上々となりました。
とはいっても性能ではいまどきの安価なデジボルにはかないません(RF測定を除いて)が、使っての私の満足感は十分なものがあります。当分座右において使ってみましょう。