2022年6月5日日曜日

HP3335A の PLL ユニットを使う

  左写真は1977年と言いますから、約45年前にHP(ヒューレットパッカード社)から世に出された機 HP3335A です。
 この HP3335A Synthesizer / Level Generator は 200Hz から 80 MHz までの正弦波を1/1000秒の単位で正確に得ることが出来る当時としては画期的な測定器で、今でも愛用している人が多いと聞いています。

 このような高価で巨大な測定器はとても縁がないと思っていましたが、縁あって、その心臓部ともいうべきPLLユニットをジャンクとは言いながら入手しました。(右写真)
 HP大好きな私としてはその造りの良さにしばらくうっとりとしていましたが、このユニット自体を動かしてみようと思い立ちました。

 そうなれば純正の回路付きのサービスマニュアルの入手が必須です。この時代のHPは極めて丁寧なサービスマニュアルを発行しており、かつ今ではネットで入手可能なものが多いです、それもフリーで!!

 左がそのマニュアルです、1990年発行とあります。











 掲載されていたこのユニットの回路図から以下のことがわかりました。

1. 電源は+15v、-15v、+5v、-5.2v の4種類が必要。
2. 出力は右図右側にあるバッファー回路を通して50Ωで約0dBmが2回路。
3. 1MHz基準周波数の入力信号は、ECLレベルでなおかつ25nS(40MHz)の高速パルス。
4. 制御信号はTTLレベルで、SER、NSH、NLCH の3種類が必要。

、、、と、結構煩雑で一瞬たじろぎましたが、勇をふるって前進です。
 1. はKENWOODの4出力汎用電源を使い、専用電源は作らず筐体が大きくなるのを避けました。
 2. 出力が物足りませんが、しばらくはこのままで、、、
 3. いろいろ悩みましたが、回路図をさかのぼって別ユニットにTTL-ECL Converter 回路を発見。

 回路中 PNPトランジスタは 2SA1015、ダイオードは ショットキー・タイプの 1SS106 で代用しました。また抵抗も手持ちのものを使用しており数値は少し変わるかも。

 1MHz基準周波数はGPSに同期した10MHZを74HC390で1/10に分周したものを使います。

 4. は前掲の回路図でわかるように、74164へSER端子からシリアル8bitデータをNSH端子のクロックに合わせ取り込み、この周波数を決めるためのデータを次段の74273がNLCH端子へラッチ信号を与えることで取り込んでいるのです。
 Arduinoを使ってスマートにやる手もありますが、今回は動作も不確定なのでオールマニュアルでトライします。

 右表は、出力周波数を決めるためのデータで、39~79MHzまでの8bitデータが表示されています。

 今回製作した、これらのデータを入力するための回路を下図に示します。
 図の上半分は前述した、GPSに同期した10MHZから1MHzのECL出力を得るものですが、高速パルスにはしてありませんが最初に74HC390APの1ピンへ入力してあるのが気休めです。

 下半分の説明に移ります、まず1bit入力セットボタンを使ってデータの1または0を決めます。(ボタンを押した状態が0)
 そのままで、1bitデータ入力ボタンをおすと74HC123AP(モノステーブルマルチバイブレータ)から74164へパルスが送られ1bitデータが74164に取り込まれ、これを8回繰り返すことで8bitデータが整います。

 そして、ここで8bitパラレルデータ転送ボタンを押してユニットはこのデータに対応して周波数を出力します。











上および右上は完成したHP3335A PLL UNIT です。中央部にあるのがコントロール基板でデータをモニタするLEDが8個(8bit)見えています。 左上の手前が電源およびシグナルの入出力BNC端子です。

左写真はコントロール基板のアップで、それぞれのボタンがはっきりと見えています。
 モニタのLEDは「1101 1000」ですから40MHzを出力中です。





 右写真は70MHzの出力をオシロで観察してみたところです。
 ちょっと見ですが、きれいで安定しているように見えます。

 39~79MHzが実際に使っている周波数領域だとされているようですが、ちょっと試した範囲では37~88MHzまでは行けそうでした。(VCOが頑張っている?)
 80MHzの出力をGPSrefのカウンタで観測してみましたが、mSの桁で0±1で収まっていました。

  APB3で40MHzの出力のスペクトルを見てみました。span10kHz、RBW10Hzのデータですがまあまあだと思います。

 下に80MHz出力時の400MHzまでのスペクトルも見てみました。怪しげなデータですが、これもまずまずでした。


 解体ジャンクのユニットで、想定していたよりいい結果が得られて幸甚でした。少し周波数範囲が狭いですが、PLLの基準周波数源や周波数変換の実験に使ってみたいと思っています。

 大きさはともかく、そこそこ電力食い(今どきの省エネに逆行して)なのが難点かも、、、、
 消費電流は、+15v:0.10A、 -15v:0.18A、 +5v:0.07A、 -5.2v:0.60Aでした。

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