2013年9月4日水曜日

真空管試験機 Tube tester の製作(その3) 回路構成

 それでは回路構成について考えていきたいと思います。(その1)でふれたように、真空管の特性はいくつかの電源(プレート、グリッドそして場合によってはスクリーングリッド)を用意すれば測定することができます。過日のブログ「  真空管試験機 Tube tester の製作(その1) 真空管とは、、、、 」参照

 そのうちgmについては先回の構想の「2. gm直読機能は必要!、容易に測定したい」を実現すべく、いろいろ調べてみました。

 基本的にgmは左図に示すようにプレートとグリッドに所定の電圧をかけ、さらに1kHzの正弦波をグリッドに加えたときのプレート電流(AC)を読めばいいとあります。
 図中の回路にある100Ωの抵抗の両端にかかる電圧(Vac)からgmを測定するのです。
 たとえば、Vacが10mVであればgmは 1mS ( 1000μmho )となります。

 プレート電流(AC)の測定法には、抵抗値の選択、さらにはトランスをつかって交流電圧を取り出す方法、究極には、抵抗を入れずにワイヤーに直接クランプ型の交流電流計をセットして電流を測定する、、、、などなどありますが、簡易にということで図中で示したように100Ωの抵抗を使いました。


 さらに、いろいろ考えた結果、右に示した回路図のようにしてgmを測定することにしました。

 参考にしたのは、Steve Bench氏による「 RAT Tube Tester Project 」にあるアイデアです。
 これはプレートに供給する電圧は定電圧電源を使い、カソード側に定電流電源を入れて一義的にプレート電圧とプレート電流を与えてしまおうというわけです。この場合グリッドは10kΩで接地しておけば、所定のバイアス値になるようです。
 厳密には問題があるかもしれませんが、LTSpiceと、簡単な予備実験でそこそこの結果が得られたので、よしとしました。

 また先回の構想の「4. 入力値(電圧、電流)は精度の良いダイヤル式とし、メータでの確認をしない。」については、これも過日のブログ「 定電流負荷装置の製作 」で採用したように、TL431で基準電圧を作り、それと被制御回路からの信号の差をオペアンプLM358で制御するなかで、基準電圧の分圧に、過去に多数ストックしてあった、2kΩ・10回転のヘリポットと、ダイヤルを使用しました。
 これらは、かれこれ4、50年前のモノですが精度は健全のようです。(写真左)

 今回、少し工夫したのは、ダイヤル直読の部分です。10回転ヘリポットを使うのですが、右図のようにヘリポットをスイッチで固定抵抗と入れ替えるようにすると、レンジの一部分を拡大でき、かつ直読できます。もちろん固定抵抗はヘリポットの実抵抗にあわせて選別しました。

 もし基準電圧として4Vをかけたとすると、左側の接続では、3~4V、右側の接続では2~3Vをそれぞれ10回転のダイヤルメモリで直読できます。

 これを応用することで、多少レンジの選択・設計には頭をひねる必要がありますが、当初の目的は達せられました。
 ということで、必要な構成要素は、
  1. プレートに供給する可変高圧定電圧回路  0~350V ~100mA
  2. スクリーングリッド用可変高圧定電圧回路  0~350V
  3. 定電流回路   0~100mA
  4. 正弦波発振回路
     5. メータ用アンプ (1kHz増幅・整流・メータ表示回路)
      6. ヒータ供給用電源
     7. グリッド・バイアス電源
ということになりました。

1. のプレート電圧供給用の定電圧回路を右図に示します。

 古典的なアナログ回路ですが、power TR unitには十分耐圧の高いものを使用しましたし、100mAの電流制限回路も組み込んであります。
 使用した電源トランスは、2次側が、100-150-200-250-300-350Vとなっていましたので、使用電圧にあわせ、タップアップ/ダウンしています。

2. のスクリーングリッドへの供給電圧はあまり精度を必要としないので、FETを使用した左図のようなものにしました。電圧のソースはスクリーングリッド供給電圧がプレート電圧を超えることは稀なので、プレート電圧から採っています。回路は簡単でよいのですが、発熱によって電圧値がどんどん変わりますので、十分な放熱が必要のようです。もちろんFETは高耐圧、、、、







3. の定電流回路を右に示します。
 過日のブログ「定電流負荷装置の製作」そのままです。電流レンジはスイッチで0~10mA、10~20mA、0~100mAの3レンジにしました。
 10~20mAレンジはヘリポットのダイヤルの読みに10を足すことになります。

4. の正弦波発振回路 および 5. のメータ用アンプ(1kHz増幅・整流・メータ表示回路)は、これも過日のブログ「ウイーンブリッジ発振回路」、「メータ用アンプ (その1)」、「メータ用アンプ (その2)」を参照してください。

6. のヒータ供給用電源 についてはトランスを使用するつもりでしたが、当然のことながら、重く、スペースをとるので、一計を案じ、16V-1Aのスイッチング電源をトライしてみました。
 供給電力は、直流電流とすることにしましたが、本来真空管はバッテリーで点火していたものですし、徐々に電流値を上げていけばラッシュカーレントも防止でき、電圧をモニターしながらヒータ(フィラメント)の劣化も多少はわかろうというものです。

 スイッチング電源はこれも規格に人気がなかったのか、驚くほど安価だったものをいくつかゲットしておいたもののひとつです。
 写真に見られるように、電源コードも長く、立派ですしノイズフィルターつきの出力コードも同様です。その後折を見て開腹し、回路をチェックしたところ基準電圧の作成にTL431が使用されており、回路定数を変更することで5~16Vを任意に出力できるようになりました。
 もちろん、これ以外の電圧や電流を必要とする真空管には外部から電力を供給できる端子を用意します。

7. グリッド・バイアス電源は一般的な回路を用い、0~-10Vから-10Vきざみで-50Vまで供給できるようにしました。

 以上のように回路構成を最終的に決めました。もちろんここまで来るのに多くの実験や改良があったわけですが、、、、

 次回はいよいよ製作です。

2013年8月28日水曜日

自動巻き時計の自動巻き


 毎日暑い日が続き、ブログもついつい滞りがちになっています。

 暦還暦記念に家族みんなからもらった時計をこの電子時計時代に逆らってこのところまた愛用し始めました。

 時刻も正確に刻んでくれますし、気分としてもなかなかいいのですが、夜の就寝時にはずしておいて朝見ると止まっている事がママあるのです。
 先回のオーバーホールからかなりの時間が経っていますので、潤滑剤が劣化したのか、はたまた齢を重ねて十分に発条を巻くだけの運動量に満たないのか、、、、と、いって四六時中肌身離さず、というわけにもいきません。

 ということで、かつてどこかで「自動巻き時計の自動巻き装置」なるものがあったのを思い出しました。それこそ超高価なレア時計を動態保存するものだったような気がしますが、はやいはなし夜の間時計が停止しない程度に動かしてくれればいいのです。
 結果、写真のような装置を作り上げました。

 細工としては夜の就寝時に、時計をこの装置にセットして、約一時間ごとに右に2回転、次いで左に2回転を繰り返せばいいのです。

 右写真に主な部品を並べてみました。

 時計の右にあるのは時計を保持するもの、左下は時計を回転させるステッピングモータとそれを駆動するためのマイクロコンピュータチップ(ATTiny2313)を載せた電子基板です。時計を保持具にセットすると左写真のようになります。

 また、右写真に組みあがった装置を斜め横から見た様子を示します。
 裏側には暗くて見づらいのですが、ステッピングモータと電子基板があります。

 
 さて、制御系についてもう少し詳しく述べてみたいと思います。 

 私はAVRを主体に、Arduino IDEでこれらのプログラムを開発しています。(以前のブログ AVR と Arduino(2)参照)
 今回はAVRチップに少し小さい
ATTiny2313を使ってみました。写真の手前にある20ピンのDIP・ICがそれです。奥はArduinoが標準としている28ピンのDIP・ICです。
 Arduino IDEでATTiny2313を扱うことができるようにするのも結構Deepな世界ですが、ネットで多くの記事がありますので、詳細は省きます。
 ステッピングモータの駆動についても先人の方々が多くの結果を示していますので、今回のプログラムにはその中のひとつのLibrary(Stepper.h)を使用しました。


 そのスケッチを左に示します。
 注記しておいたように、Laibraryを呼んで、ステップモータの1回転あたりのステップ数(仕様)、Arduinoのピンとの接続、回転速度、ステップ数と方向を示してやれば簡単に動きます。

 ただ当初、時計を回転させるのに、単なる直流モータを使うか、ステップモータを使うか大いに迷ったのですが、駆動系を簡素化するために、後者を選びました。その結果、加工・工作は容易になりましたが、問題が発生しました。ひとつは回転時のステップ振動です。これはまあ我慢するとして、もうひとつの問題は看過できません。

 それは発熱の問題です。ステッピングモータは言い換えれば決まった位置に止まるためのものですから、停止時に最も電力を消費します。

いろいろ考えた結果、必要な回転操作が終わって、時間待ちの間(約1時間)はステップモータへの電源をリレーで遮断することにしました。Arduinoのピンはまだたくさんあまっていますので、トランジスタでミニ・リレーを駆動する回路を後から付加してOKです。

 今回はステップモータにミネベアのPM35S-48というものを使用しましたが、コイル結線図を示しておきました、、、、
 あ、もちろんステップモータのドライブにはMP4401というドライバーICを使っていますが、何でもOKです。

 酷暑のなか、久しぶりの慈雨のおかげでモノつくりができました。やはり手と頭を動かすのは楽しいです。

2013年8月10日土曜日

日光クラシックホテルと東照宮 (2/2)

 これはホテルの140周年記念を表すポスターの一部です。

 右写真はホテルのマークが入った灰皿と部屋の鍵です。
 ポスターも木製のキーホルダも共に近くにある神橋(しんきょう)がデザインされています。(キーホルダは擬宝珠)

 時間になったので朝食に出かけました。場所は同じダイニングでも少し違うようです。まだ人も少なく窓際の明るい席に案内されました。

 朝食は軽い洋食でしたが、ゆったりとした気持ちでおいしくいただきました。とくにここのベーコンの味は出色でした。


 食後、ホテルの案内図にあった「龍宮 Dragon Palace]
なる場所をまるで探検するようにさがしまわり、ようやく見つけました。本館の3階からさらに右写真の階段を上がっていくと龍宮です。
 今ではあまり使われていないようで、人の気配もありません。


 龍宮の前に見える浅い池はスケートリンクなのです。戦前の古い写真には多くの外国人観光客が、スケートを楽しんでいるシーンがいくつか見られましたが今は夏のせいでもあり、ガランとしています。

 さらに奥の山手に向かってホテル裏山を周遊する散策路「大黒山散策路」を登って見ることにしました。右写真は上り始めてしばらく後、龍宮を見下ろしたところです。

 緑色に見えるのはプール(今はクローズ)でその右がスケートリンクです。
 左写真は散策の途中で見かけた不動明王の像です。

 部屋へ帰ってしばし休息の後、チェックアウトして日光東照宮へ出かけることにしました。境内は広いのですが、徒歩で十分にいけるところなので、荷物はホテルに預けて、身軽になって出かけました。昼食もホテルにしようと言う気持ちもありましたので、、、、

 東照宮は徳川家康を神格化し、祀ったものですが、これは家康自身の遺言によるものとされています。死後直ちに駿府の久能山に葬り、翌年日光に移され、さらに現在見られるような規模になったのは三代将軍家光の時代、寛永の大造替によってです。

 正一位を追贈され、国家鎮護の神社(当時は東照宮・二荒山神社と寺院の輪王寺のセット)として勢いを得たため、当時は全国で数百箇所の東照宮が造営されたとのことですが、現在は少なくなったとはいえ、まだ百を越える東照宮が存在するらしい、、、、

 と言う事で、多くの東照宮と区別するために日光東照宮という名が正式となったとの事、、、、

 先ず私たちが最初に訪れたのは神橋(正式には二荒山神橋 ふたらさんしんきょう)です。

 この橋は奈良時代からその存在が伝えられ、現在の橋は、平成9年よりの大修理によるもので、平成11年に世界遺産に登録されています。




 かつての徳川将軍たちはこの橋を渡って、日光東照宮を参拝したと言う事ですが、通常は通行が出来ないようになっています。



 この橋を少し遡ったところから、私たちが昨夜宿泊したホテルの部屋が仰ぎ見られます。

 この川(大谷川 だいやがわ)の岸辺には
キスゲが咲いていました、これが本当のニッコウキスゲ、、、、


 対岸に渡り、いよいよ日光東照宮へ参拝です。
 参道にかかる最初の地点に世界遺産であることを示す記念碑がありました。

 1999年に文化遺産として、登録名「日光の社寺」で登録され、日光東照宮、日光二荒山神社、日光山輪王寺を主体として103棟の「建造物群」と、これらの建造物群を取り巻く「遺跡(文化的景観)」がその全容です。

 しばらく参道を登ってゆくと、「この地点の標高は東京スカイツリーとおなじ!!!」と言う表示に出会いました、なるほど、、、、634mね、、、、

 日光東照宮の入り口が見える地点です(前述の案内図の①)。
 まだ時間が早いせいかそれほど人出は多くありません。

 おや、これはどこかでお目にかかったような、、、、ホテルにもあったゾウ、、、、





 三神庫を遠くから見たものですが、正倉院の校倉造りを模したものだとか、極彩色の色付けが華々しい事この上もありません、これが日光なんですね~


 これが「みざる・いわざる・きかざる」で有名な神厩舎です。写真のように長押にはサルの一生を表現した木彫りのレリーフが何枚もあり、「みざる・いわざる・きかざる」の場面はその一枚です(写真左下)。「幼いときはむやみに行動しないで周りをよく観察せよ」と言う教訓です。

 サル(人の例示)が生まれて成長し、配偶者を得るわけですが、最後のおなかの大きなサルがなんとも可愛くて写真の左上に挙げておきました。

 アーティフィシャルな色使いと、左写真のような自然が妙にマッチしているのも日光です。

 右写真は御水舎(おみずや 参拝前に手を洗い清める所)の天井です。見事な彩色に思わず見とれてしまいました。

 さて次は、前々から楽しみにしていた、左甚五郎の手によると言われている「眠り猫」です。頭上の長押に小さく収まっていますので、教えられなければ見過ごしてしまうでしょう。

 ここは家康公が眠る、奥社宝塔への通路なので、眠ったふりをして守護している、とか、ネコのすぐ裏側でスズメが遊ぶ様子(右写真)が平和を表現しているとか、諸説あるようです。


ということで、さらに急な石段を登って(左写真)、奥社宝塔へすすみます。




 このなかには家康公が永眠されているとのことですが、、、、確かに周りの空気もそれなりに、、、、


 奥社の方角から本社を見た景色です。
 濃い緑に囲まれてスポットライトが当たったように見えています。(案内図③)


 途中の参道もきれいな石造りで、確かにこの規模とセンスは世界の文化遺産たる面目躍如です。


 内陣天井に描かれている、鳴竜で有名な本地堂(薬師堂)から工事中の陽明門方向をみたところです。
 参拝者は小・中学校の生徒がおおく、またなぜか外国人の割合が多いような気がしました。


 また鳴竜は天井と床での音の反射によるものですが、この原理を応用してJR日光駅にも造られており、帰り際にトライしたところ見事に鳴きました。

 右写真は、仙台藩主伊達政宗が、ポルトガルから鉄材を輸入し、領内の租税3年分の費用をかけて作ったと伝えられる「南蛮鉄燈籠」です。写真の右下に銘を記載しておきました。



 そろそろお昼時になり、少しくたびれて来ましたので、帰路につくことにしました。
 せっかくの事なので下野の国・一ノ宮の二荒山神社にもお参りしていくことにしました。ここには大国主命がお祭りしてあるそうです。(案内図④)



 さらに足を伸ばして、案内図⑤の日光東照宮美術館にも立ち寄りました。なかなか地味な、襖絵を主体とする美術館でした。メインは円山応挙の日輪の絵でしたが、簡略化されたなかにもさすがに迫力がありました。
 
 庭に目をやるとなにやら水音がします(右写真)。
日光の名水「ごんげん水」飲料用、、、、とありましたので、さっそく飲んでみましたが、渇きも手伝ってなかなかおいしいお水でした。流れに着いた色から判断して、鉄をはじめとしたミネラルが豊富のようです。



 再びホテルに帰りつき、遅めの昼食に「百年カレー」なるものを賞味してみました。クラシック・カレーとしては東洋軒のブラックカレーがありますが、それに比べると若干やさしい、フルーティーな味がするようですが、流石においしいと言う点では一致します。



 カレーをシッカリ味わってから、デザートのアイスクリームを食べつつ、ふと壁を見ると、JRのポスターが目に入りました。

 NIKKO is NIPPON
 「日光に宿るぬくもりは、いまもかわらない」

というキャッチコピーです。まさに今回私たちが堪能したそのままです。
 なんだか幸せな気分になってホテルをあとにしました。