2012年4月25日水曜日

STAXのイヤースピーカーと自作真空管式ドライバー


 今日は少し変わったマニアックなオーディオ用ヘッドホンについて書いてみます。

 一般のヘッドホンは磁界の中に置かれたコイルに音声電流を流す事によって、そう、いわゆるマグネティックスピーカと同様にコイルに接続されたコーンの振動で音を発する仕掛けで、世の中のほとんどがこの方式です。

 ところが世の中には必ずヘソ曲がりが存在するもので、表題にあるSTAXという会社が製造しているイヤスピーカがそれです。名前からして、ヘッドホンとすればいいものを、イヤスピーカなどと呼称しているのでなおさらややこしくなります。とはいえ、原理的にはオリジナリティたっぷりで、静電気駆動方式です。



 静電気駆動と言うのは、右図のように、左右の固定電極に音声に同期した高電圧をかけると中央の振動版が振動し、音を発すると言うものです。


 もともとこのSTAXと言う会社は1938年に創立され、1950年代初めにはコンデンサーマイクロフォンやコンデンサーカートリッジ(レコード再生用)を世に出した会社で、1960年代になるとイヤースピーカーヘッドホン)、フルレンジ・コンデンサー・スピーカを発表しています。そしてその性能のすばらしい製品はオーディオマニアの間では垂涎の的です。


 左の写真がコンデンサーカートリッジ。

 右の写真がフルレンジ・コンデンサー・スピーカ。

 また、1936からの歴史を持つと言う、世界的に有名なイギリスの「QUAD]の、現在でも引き続き新モデルが出されているESLスピーカ(やはりコンデンサータイプ)も1950年代半ばの出現だったと思います。 写真左

 このようによき伝統を持ったユニークなSTAXも製品がマニアックに偏り、またその事で製品価格がさげられなかったりして、せっかくのすばらしい技術や、徹底的なアフターケアをもちながら、昨年末約1.2億で中国の会社に買収されてしまったようです。 幸い事業は継続され、今後もメンテナンスは受けられるようです、、、、



 さて、したがって私も長年STAXのイヤースピーカを入手するのが夢だったのですが、数年前ようやくにして普及品ですが入手する事が出来ました。写真右のSR-303です。


 ところが課題はもうひとつありました。イヤースピーカは前述したように独自の静電気駆動をするため、既存のアンプに接続できないのです。かといって純正のドライバー(STAXでは専用アンプをこう呼んでいます)は私にとってさらに高価で、、、、ということで自作を決意しました。


 アンプの電気回路はSTAX過去に公表していましたので、資料はネットでさがしました。こういうところが、STAXのすばらしいところです。
 高電圧を駆動するので真空管がベストフィットです。さいわいこのあたりは私の得意な領域で、STAXの公表資料を参考にリファインして出来たのが、左図です。高電圧を使うため安全のために要所のみ表示しました。また電源回路も省略しました。回路は常識的なものなので、必要な方にはお分かりかと、、、、



 右写真は使用した真空管6FQ7(左)と12AX7(右)



 左写真は作製したドライバー(アンプ)の裏側です。高圧を使用する真空管回路ですので、最近の半導体回路とは少し異なっています。
 全体写真は一番上にあります。前面から信号を(赤-右、白-左)いれます。音量調節は中央、緑色に光っているのはパイロットランプです。

 肝心の音のほうですが、振動膜のイナーシャが小さいせいか、高音が限りなく繊細で、かつ過渡応答性がいいです。これがいろいろもてはやされ、熱烈なフアンが存在する所以なのでしょう。もちろん低音も十分です。
 部屋を暗くすると、真空管がほのかに光っているのがわかります。私を含めて真空管ファンにとってこの光はたまらなく心を安らげてくれます。この光を見ながら好みの音楽を聴くのは本当に至福のひとときです。今宵は何を聴きましょうか、、、、、

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