2016年11月18日金曜日

80年前の映画を観てきました

 先日古い映画を観てきました。
 1933年の公開ということですので、正確には83年前と言うことになります。

 「会議は踊る」がこの映画の題名ですが、今になるまで機会が無く、今回ようやく念願がかなったのです。

 以前このブログで紹介した(チャップリンの 「街の灯」をオーケストラ・ライブで観てきましたアメリカ映画であるチャップリンの「街の灯」は1931年でしたので、ハリウッドからの映画の波はヒトラーが台頭しつつあるドイツにも例外なくトーキー化の技術と共に押し寄せたのでしょう。

 淀川長治の世界クラシック名画100撰集に選ばれているとは言うもののあまり一般的でないのも確かですが、この映画の主題歌、「 Das gibt's nur einmal 」(日本語訳の題は「唯一度だけ」または「命かけて只一度」)はいつかどこかで耳にしたメロディとして多くの人の心の中に根付いているものと思います。

 また、宮崎駿の「風立ちぬ」の挿入歌にも使われていますが、時代背景が似ていると言うだけではなく、宮崎監督自身の心に根付いていたものが表現されたのではないかと私は思います。

 物語はナポレオンが失脚しエルバ島に流された後の戦後処理のために開かれた1814年のウィーン会議を時代背景にしています。


 この会議はオーストリア外相メッテルニヒが主宰したものですが、晩餐会・舞踏会・音楽会ばかりで一向に議事が進行しない様を風刺して同じくオーストリアのリーニュ侯爵シャルル・ジョセフが発したといわれる「会議は踊る、されど進まず」(Le congrès danse beaucoup, mais il ne marche pas.)と言う言葉が有名で、映画の題名も『会議は踊る』( Der Kongreß tanzt )です。(侯爵はフランス語、映画の題はドイツ語)

 いよいよ映画の始まり、、、、(右は映画の題字)

 この乱痴気騒ぎのウイーン会議にやってきた気まぐれ気味のロシア皇帝アレクサンダー1世とその気まぐれに本気になってしまう皮手袋店の売り子娘(リリアン)の一時の恋がテーマです。

 左は皮手袋店の店頭でのリリアン、お客はただの下士官ですが、テーブルの上の肘置きが面白く、こうして手袋のフィッティングをしたようです。

 ビアガーデンのような酒場で意気投合した皇帝とリリアンですが彼は終始一貫して彼女との距離を置いた振る舞いをしています。

 ここで酒場の歌手が歌うもうひとつの主題歌「 Das muß ein Stück vom Himmel sein 」(日本語訳の題は新しい酒の歌」または「歌あればこそ世は楽し」)はウイーン情緒あふれた宵にふさわしい名歌だと思います。

 そして翌日、彼女は皇帝差し回しの馬車で彼の別荘へ向かうわけですが、このときに歌う歌が「 Das gibt's nur einmal 」(日本語訳の題は「唯一度だけ」または「命かけて只一度」)なのです。
 長時間の移動シーンで、馬車の彼女も、周りの景色の移り変わりに伴って現れる道々の人々も皆心からこの歌を歌うのです、Das gibt's nur einmal」を

 別荘に行っても彼とは会えず、時たま登場する彼の影武者とのぎこちないやりとりのみでした。

 この影武者は自室に入ると何故かいつも嬉々として刺繍をしています、それも「ボルガの船曳歌」を歌いながら、、、、

 紆余曲折あってのち、二人は舞踏会で再会し、再度あの酒場での語らいを楽しむ、、、、間もなく、ナポレオンがエルバ島を脱出したとの知らせが入り彼は急ぎロシアへ帰ることになります。

 薄暗闇で彼女が別れの手を振っています。その白い手袋が印象的なラストシーンです。

スタッフ
 監督:エリック・シャレル
 製作:エーリヒ・ポマー
 脚本:ノルベルト・ファルク
 撮影:カール・ホフマン
                 音楽:ヴェルナー・リヒャルト・ハイマン

キャスト
 アレクサンダー一世と替玉ヴィリー・フリッチ
 手袋屋の娘クリステル  :リリアン・ハーヴェイ
 宰相メッテルニヒ    :コンラート・ファイト
 伯爵夫人        :リル・ダゴファー
 酒屋の歌手       :パウル・ヘルビガー

 この映画はまぎれもなくドイツ映画ですがそのストーリー構成はすばらしく、楽しさ・もの悲しさはまさにミュージカル映画そのものです。

 終わって気づいたのですが、この映画のテイストが「マイフェア・レィデイ」と同じだったのです。「会議は踊る」の監督エリック・シャレルも「マイ・フェア・レディ」の監督ジョージ・キューカーも共に舞台での監督を経験しているからなのでしょうか。

 大銀幕と大音響で80年前の音と映像を堪能しました。

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