2019年2月20日水曜日

メンデルスゾーン オラトリオ エリヤ(ELIAS)

 先日、ごく親しい友人ご夫妻のお招きでメンデルスゾーンのオラトリオ「エリヤ」を鑑賞する機会を得ました。

 オラトリオとは宗教的な叙事的題材を、声楽(独唱、合唱)とオーケストラで演奏する規模の大きな曲で、オペラと異なるのは、演技や衣装、・道具などを用いない点です。

 ヘンデルの「メサイア」、ハイドンの「天地創造」などが有名ですが、メンデルスゾーンも1846年のこの「エリヤ」に先立つ1836年に、「聖パウロ」を世に出しています。こののち「キリスト」が予定されており、本来ならばメンデルスゾーンの「オラトリオ3部作」となるはずでしたが、彼が38歳で夭折したことで実現しませんでした。
 
 今回鑑賞した「エリヤ」は第1部と第2部に分かれ、それぞれが約1時間の大作でした。

 第1部は、イスラエルの地にバアルの偶像崇拝信仰が広まったことに怒った神エホバが、長期にわたる旱魃をもたらした場面から始まり、預言者エリヤがバアルの預言者たちとの対決で主の火を降下させることに成功し、打ち勝ち、預言者たちを排除して、降雨の奇跡をおこなうまで。

 第2部は、奇跡をおこなったエリヤの台頭を恐れた、イスラエル王妃イゼベルに追われ、エリヤがイスラエルから逃げ、最後には後継者エリシャの目の前で火の馬車により天に上げられるところまでとなっています。


名古屋市民コーラスのホームページより
 冒頭の絵画は、最後のシーンを表現したもので、後期バロック様式のイタリアの画家ジュゼッペ・アンジェリ(1709-1798)による「 Elijah Taken Up in a Chariot of Fire 」で、今回の演奏会のポスターにも使われています。

 今回の演奏会は名古屋市民コーラスの創立60周年記念演奏会の第1回で、第2回はこの11月にブラームスの「ドイツ・レクイエム」が予定されています。
 
 写真は一昨年に演奏されたヴェルディの「レクイエム」のカーテン・コールで、例によって共演は名古屋フィルハーモニー交響楽団です。
 写真から分かるように、1959年に発足した名古屋市民コーラスは常時200名の団員数を有する大合唱団で、今回のようなオラトリオや、レクイエムなどで圧倒的なパワーを体感させてくれます。

今回の演奏会は以下のような構成でおこなわれました。 
 
      角田鋼亮
      エリヤ    末吉利行
          ソプラノ  本田美香  田代華菜
          アルト    三輪陽子  佐藤文美
          テノール  大久保亮  田中準
               田中潤
 ソプラノ(クナーベ役)長谷川紘初
管弦楽   名古屋フィルハーモニー交響楽団
     名古屋市民コーラス
合唱指揮  長谷順二

 指揮者の角田鋼亮さんはまさに新進気鋭で、プレトークでは学生時代(23歳)に、名古屋市民コーラスの第33回定期演奏会(2003.11)「エリヤ」を、師の佐藤功太郎氏が指揮されるのを楽屋裏から観た、との話で今回の演奏を楽しみにしておられた由。
 また演奏後の感想では、オラトリオとはいうもののまるでオペラのような感覚で指揮ができ、新しい境地が開けそう、、、、とも述べておられます。

 エリヤ役のバリトン末吉利行さんもまた2003年に引き続き出演されています。まさに押しも押されぬはまり役と言った感じでオラトリオを盛り上げていただきました。パワーとスタミナに脱帽です。

 ソプラノの本田美香さんも熱演が光っていました。
 時間が経つにつれ伸びやかな声がますますすばらしく、今後の活躍が期待されます。

 クナーベ役・ソプラノの長谷川紘初(はせがわこうは)さんの強く、透明感のある声には驚きました。宗教曲にはよくボーイソプラノも使われますが、多くはソプラノが代行します。でもボーイソプラノのようなガールソプラノは珍しいとおもいます。
 フォーレの「レクイエム」にあるピエ・イエズを昨年スペインで演奏し、絶賛されたとありますが、 現在中学2年生とのこと、少しでも長く演奏できることを願ってやみません。

 ということで久しぶりに時間も忘れ、すばらしい演奏に心を揺さぶられました。
 改めて友人ご夫妻に感謝です!!!