2022年6月12日日曜日

KENWOOD PWR18-1.8Q 定電圧電源の修理

 少し前になりますが、左写真(ネットから借用した一般的な写真)のような「
KENWOOD PWR18-1.8Q」多出力定電圧電源 を入手しました。

 かれこれ20年も前のモノなので当然新品であるわけでもなく、やってきたときの姿は、筐体はあちこち凹みや擦り傷があり、ロータリーエンコーダのツマミはなく、ロータリーエンコーダ自体も少し歪んでまともに動くかどうか怪しい感じでした。
 当然ジャンク扱いで保証なしですがその分極めて廉価で入手できました。

 右写真は入手した装置を分解修理するために押し釦スイッチの押し釦をテープで仮止めしているところです。
 この手のパネルは取り外したとたんに押しボタンがバラバラに外れ、元の位置にセットするのに大変な苦労を強いられることになるからです。

 パネル面も薄汚れたままです。








 いろいろ手を入れるには回路図が必須なのですが、この製品については取説のみで、回路図はネット上にはありませんでした。でも、取説でもあると無いとでは大違いです。

 このKENWOOD PWR18-1.8Q」多出力定電圧電源は±18V 1.8A(トラッキング可)、8V 2Aそして-6V 1Vの4出力の定電流/定電圧電源で、開発・実験用途を意識して作られたようで、まさに私にとって最適なものです。

 基本的には、トランスを用いたシリーズ電源で、いささか古い感じはしますが、今時のスイッチング方式の電源と比較して、ノイズが少なく、壊れにくい特徴があり、多少嵩と重量が大きいといった難点はとるに足りません。

 写真のように、どんどん分解していきます。
 内部の配線やプリント基板はほとんど新品同様でホコリなどもほとんど無ありません、ファン・レスなのも幸いしていたようです。






 右写真上は、フロントパネルの下にあるこの装置の制御基板です。
 問題は修理云々ではなく、再組み立ての折、黄色で囲ったLEDが右写真下の前面パネルの穴にすべてキチンと入らねばならず、これが最大の難関でした。





 先ずは、ロータリーエンコーダの修理です。
 左写真中、黄色の丸で示したのがそれで、下写真のように取り外し、分解・清掃の結果異常なさそうなので、歪みを修正し、再組付けをしました。






 本機には電源を落としたのちも、設定条件を記憶することが出来る機能が有ります。しかしながらこのためのメモリーに必要な電源である、スーパーキャパシタ(右写真中の黄色丸印)の劣化が早くに起きるとの情報が多くあり、最新のものに交換しました。









 上写真中央がスーパーキャパシタ(正確には電気二重層コンデンサ)の新旧比較です、小さいほうが0.1F 5.5V 交換した大きなほうが1F 5.5Vで、プリント基板にやっと収まっていますが無事再組み立てできました。これで従来の10倍は長持ち、、、?

 ことのついでに、出力のON-OFFボタンの感触が、使用頻度が高かった故か少しおかしかったのでこれも交換しておきました。








 ということで、修理完了です!

 右写真はしっかりとフロントパネルもきれいに清掃した本機です。ロータリーエンコーダのツマミがあり合わせなので少しおかしいですが、機能、操作性共に生き返りました。

 今後の実験に、大いに役立ってくれることでしょう。

2022年6月5日日曜日

HP3335A の PLL ユニットを使う

  左写真は1977年と言いますから、約45年前にHP(ヒューレットパッカード社)から世に出された機 HP3335A です。
 この HP3335A Synthesizer / Level Generator は 200Hz から 80 MHz までの正弦波を1/1000秒の単位で正確に得ることが出来る当時としては画期的な測定器で、今でも愛用している人が多いと聞いています。

 このような高価で巨大な測定器はとても縁がないと思っていましたが、縁あって、その心臓部ともいうべきPLLユニットをジャンクとは言いながら入手しました。(右写真)
 HP大好きな私としてはその造りの良さにしばらくうっとりとしていましたが、このユニット自体を動かしてみようと思い立ちました。

 そうなれば純正の回路付きのサービスマニュアルの入手が必須です。この時代のHPは極めて丁寧なサービスマニュアルを発行しており、かつ今ではネットで入手可能なものが多いです、それもフリーで!!

 左がそのマニュアルです、1990年発行とあります。











 掲載されていたこのユニットの回路図から以下のことがわかりました。

1. 電源は+15v、-15v、+5v、-5.2v の4種類が必要。
2. 出力は右図右側にあるバッファー回路を通して50Ωで約0dBmが2回路。
3. 1MHz基準周波数の入力信号は、ECLレベルでなおかつ25nS(40MHz)の高速パルス。
4. 制御信号はTTLレベルで、SER、NSH、NLCH の3種類が必要。

、、、と、結構煩雑で一瞬たじろぎましたが、勇をふるって前進です。
 1. はKENWOODの4出力汎用電源を使い、専用電源は作らず筐体が大きくなるのを避けました。
 2. 出力が物足りませんが、しばらくはこのままで、、、
 3. いろいろ悩みましたが、回路図をさかのぼって別ユニットにTTL-ECL Converter 回路を発見。

 回路中 PNPトランジスタは 2SA1015、ダイオードは ショットキー・タイプの 1SS106 で代用しました。また抵抗も手持ちのものを使用しており数値は少し変わるかも。

 1MHz基準周波数はGPSに同期した10MHZを74HC390で1/10に分周したものを使います。

 4. は前掲の回路図でわかるように、74164へSER端子からシリアル8bitデータをNSH端子のクロックに合わせ取り込み、この周波数を決めるためのデータを次段の74273がNLCH端子へラッチ信号を与えることで取り込んでいるのです。
 Arduinoを使ってスマートにやる手もありますが、今回は動作も不確定なのでオールマニュアルでトライします。

 右表は、出力周波数を決めるためのデータで、39~79MHzまでの8bitデータが表示されています。

 今回製作した、これらのデータを入力するための回路を下図に示します。
 図の上半分は前述した、GPSに同期した10MHZから1MHzのECL出力を得るものですが、高速パルスにはしてありませんが最初に74HC390APの1ピンへ入力してあるのが気休めです。

 下半分の説明に移ります、まず1bit入力セットボタンを使ってデータの1または0を決めます。(ボタンを押した状態が0)
 そのままで、1bitデータ入力ボタンをおすと74HC123AP(モノステーブルマルチバイブレータ)から74164へパルスが送られ1bitデータが74164に取り込まれ、これを8回繰り返すことで8bitデータが整います。

 そして、ここで8bitパラレルデータ転送ボタンを押してユニットはこのデータに対応して周波数を出力します。











上および右上は完成したHP3335A PLL UNIT です。中央部にあるのがコントロール基板でデータをモニタするLEDが8個(8bit)見えています。 左上の手前が電源およびシグナルの入出力BNC端子です。

左写真はコントロール基板のアップで、それぞれのボタンがはっきりと見えています。
 モニタのLEDは「1101 1000」ですから40MHzを出力中です。





 右写真は70MHzの出力をオシロで観察してみたところです。
 ちょっと見ですが、きれいで安定しているように見えます。

 39~79MHzが実際に使っている周波数領域だとされているようですが、ちょっと試した範囲では37~88MHzまでは行けそうでした。(VCOが頑張っている?)
 80MHzの出力をGPSrefのカウンタで観測してみましたが、mSの桁で0±1で収まっていました。

  APB3で40MHzの出力のスペクトルを見てみました。span10kHz、RBW10Hzのデータですがまあまあだと思います。

 下に80MHz出力時の400MHzまでのスペクトルも見てみました。怪しげなデータですが、これもまずまずでした。


 解体ジャンクのユニットで、想定していたよりいい結果が得られて幸甚でした。少し周波数範囲が狭いですが、PLLの基準周波数源や周波数変換の実験に使ってみたいと思っています。

 大きさはともかく、そこそこ電力食い(今どきの省エネに逆行して)なのが難点かも、、、、
 消費電流は、+15v:0.10A、 -15v:0.18A、 +5v:0.07A、 -5.2v:0.60Aでした。