2021年11月21日日曜日

HP 5385A 周波数カウンタのリペアと高精度改造

 その内容は別にしても、知らぬ間に?ブログのカウンターが40万回を超えていました、皆さんのご厚意に感謝するとともに、「継続は力なり、、、」に気持ちを強くしています。

 さて今回は、お題にあるように周波数カウンタのリペアと高精度改造です。このヒューレット・パッカードのHP 5385A周波数カウンタは、下に示した1984年の製品カタログに新製品として掲載されていますので、今から36年前の製品です。

 しかしながらこのモデルは
測定最大周波数が1GHzまで、表示は11桁あり、なおかつ小型軽量( 238mm W x 98mm H x 276mm D 1.4kg)で、省電力(18VA)かつバッテリ駆動もできるといった優れもので、大変に使いやすいものです。

 そうは言っても寄る年波には勝てず?ここのところ放出されたジャンク品をよく見かけますがこの製品も同様で一葉さん未満で入手してあったものです。
 その折の商品説明には、電源が入らない旨明記してありました。

 裏面パネルを見るとフューズボックスの一部が欠品していました。それを横目に見ながら、さっそく分解していきます。

 底面にある4本の長ビスを外し、左右のサイドパネル最前部にある飾りテープをはがせば、ケースの上半分を持ち上げるようにして外すことが出来ます。
 基板は1枚だけですので、ビスを2本外せばケースの下半分も外せます。

 フューズボックスはAC入力ラインではなく、AC100Vの降圧整流後のDC13.5Vに対する2Aのフューズ用でした。左写真の黄色丸印の中にあるように手持ちの部品を回路を確認しながら取り付けて一段落です。

 異常が起こらないか、五感・全神経の感度を最大にして電源スイッチを入れると0が8桁並び、初期テストクリアです。前面パネルの CHECK ボタンを押すと10MHzが表示され、もう一度押すと PASS CPU が表示され何とか動いているようですが、これでおしまいではありません。

 フューズ断線だけでジャンク放出されるほど世の中そんなに甘くありません。ほかに何かフューズ断線の原因があるのだろうとネットでいろいろ調べた結果、この時期の電解コンデンサ(SPRAGUE かつての一流ブランド、、、)に問題があるようです。左上、右写真中のきれいなアルミカン状のものがそれで、右写真では下部が膨れ上がっているのがわかります。今回交換した現状の同等品は極めてサイズダウンされており、技術の進歩を感じます。




 左写真は、フューズ、電解コンデンサ2個を交換したのちの基板部分写真です。

 基板全体の写真は下に掲載しました。右側がフロントパネルになります。左下にある小さなボードはHPIB(GPIBのことで、オリジナルはヒューレットパッカードが開発した)ですが、私のラボでは交信設備がないので結線を外してあります。


 しばらく様子を見てみましたが異常ありません、ついでに他の電解コンデンサやタンタルコンデンサもチェックしましたがすべてOK でした。

 このモデルは、基準発振にTXOC(これでもOPTION 01)が搭載されていましたが、せっかく11桁表示が出来るのですから、OPTION 04のOCXOタイプにしてみることにしました。オリジナルはレアかつ高価でとても入手する気になりませんので、自作してみました。

 主なるパーツは、OCXO(CTI OSC5A2B02)と、右写真中赤丸で示した、基準電圧発生IC(MCP1501-20E)そしてバーンズの多回転可変抵抗(100Ω)です。



 上図は回路図です。出力部分にあるローパス・フィルタは矩形波をサイン波にするものですが、省略してもよいかと思います。

 この中華製OCXO(CTI OSC5A2B02)は中古品が多く出回っており、安価でほどほど安定していますので、私は愛用?しています。

 実用に先立って、このOCXOがほぼ10MHzを出力する制御電圧(回路図中 VC)を知る必要があります。
 左写真はその実験中で、MCP1501-20Eの公称出力電圧2.048Vを100Ωの多回転可変抵抗+1kΩで分割し、約1.95VをVCに加えたところ約10MHzが出力されました。

 オシロにはきれいなサイン波が見られます。


 ということで、いよいよ自作OCXOの実装です。
 上写真の上半分が改造のビフォア、下半分がアフターです。以下順を追います、、、

1. 1番にあるTCXOを注意深く除去します。

2. 2番のようにジャンパー線を左上の赤丸位置から右側の位置に付け替えます。
3. 3番のプリントパターンにある場所にセラミック・コンデンサ(0.01uF 50V)とリアクタンス(使わない HPIB基板から移植)を取り付けます。
4. 最後に4番の位置に自作OCXOを実装します。(左写真参照)

 左が完成写真です。
 あとはエージングしながら標準10MHzの信号(私は過日このブログにアップした「GPSDOの製作 その2_完成http://yuuyuusyumi.blogspot.com/2021/08/gpsdo.html」を使用)の測定表示がピッタリ10MHzになるように多回転可変抵抗を回して合わせこんでいくだけです。

 右写真に調整中のHP 5385Aを示します。

 実力としては約7日間のエージングで、mSecの数字がパラパラと動く程度になりました。
 もちろんこれはスタンド・アローンの場合で、必要とあればリアパネルにあるリファレンスへ前述のGPSDOの出力を入れればいい話なのですが、、、

 興味本位で入手しておいたHP385A 周波数カウンタが立派に蘇りました。アマチュアが日常使うには十分だと思います。またこの時代のヒューレットパッカード社の技術の高さを垣間見ながらのリペアは大変楽しいものがありました。