2016年4月30日土曜日

Qメーターの製作 3/3 (ケース製作、実装、測定)

 Qメーターの製作も今回で完成です。

 左写真に完成披露写真を挙げておきます。片手の掌に載るかわいい?測定器が出来上がりました。

 上方にはサンプルのコイルを接続するための端子、100uAのメーターは少し大き目で観やすいです。
 右側の大きなダイヤルは同調用のVCで容量をF単位で書き込んでおきました。
 その下が電圧計の感度調節ツマミで、メーターの下のスイッチは入力に入っている-3dBのアッテネーターです。
 高周波入力は左下のBNC端子、電源入力プラグ(+12V)はその上にあります。

 最も重要なケースは評判の秋月ABS樹脂ケース(蝶番式・大)112-TM-ABS を使うことにして、右写真のように加工しましたが、確かに加工しやすく、割れにくいです。

 メインシャーシーを今回はプリント基板を切り、ハンダ付けして作りましが、この方法も加工しやすく、組上げの自由度があります。
 例によって私はほとんど図面を引かず、現物あわせです。

 高周波供給ユニットは汎用スルーホール基板の切れ端で作成しました。
 配線図を再掲しておきます。





 左がエミッタフォロア部、右が-3dBのアッテネーターです。


 次いで高周波電圧測定ユニットです、これも配線図を再掲しておきます。




 これも同様に汎用スルーホール基板の切れ端で作成しましたが、まるで一昔前のハイブリッドICのように小さいです。




 もちろんこの段階で通電して、個々の性能が間違いなく出ていることの確認が必要です。

 右写真はケースにメインシャーシーを取り付け、さらに部品類やユニットなどを取り付けつつある様子です、徐々にイメージが出てきました。

 この中央部に高周波電圧測定ユニットハンダ付けすれば一段落です。

 下写真の左は2ユニットあるVCを並列使用するためのスイッチですが出来るだけVCに近く設置したいのでここにしました。スイッチ操作は裏ブタを明けて行います。




 右はサンプルのコイルを接続するための端子ですが、いろいろなアダプターを差し込めるように中心間隔を19.1mmの標準ダブルバナナプラグに合わせてあります。


 ようやくにして完成したQメーターの裏面です。
 ケースの底面をフロント面にしていますので裏ブタを明けて調整・点検などが容易です。

 それでは簡単に使用法を説明しておきます。

 ① あたりまえのことながら、電源(+12V)を接続し、次いで高周波源のシンセサイズド・シグナル・ジェネレーター(SSG)とBNCケーブルで接続します。

 ② 測定したいコイル(インダクター)のインダクタンスをあらかじめLCRメーターで測定しておきます。
 その結果から、左にしたがって使用する周波数を決め、SSGの周波数をセットすると共に出力を500mVにします。

 ③ 冒頭写真の同調用VCダイヤルをゆっくり回し、とりあえずメーターの振れが最大になるようにします。(振れが100を超えるときは電圧計の感度調節ツマミで100以下になるようします。)

 ④ さらにSSGの周波数調整でメーターの振れが最大になる周波数(f0 )を詳細にもとめ、電圧計の感度調節ツマミでメーターの振れを100にします。

 ⑤ 再度SSGの周波数調整でメーターの振れが右写真のように70(厳密には70.7、3dB下がった点)を示す周波数fHi f0 より高い側)fLo f0 より低い側)の2点を測定し記録します。

 ⑥ そして下図にある数式によってQ値を計算します。
  


 冒頭写真のコイルについて実測の例を以下に示します。

 インダクタンス 5uH
 f0  8002 kHz
 fHi 8038 kHz 
 fLo 7958 kHz 
 Q 99.975

 ということで何とか実用できそうなものができましたので、さっそく色々なコイルを自分で巻いてみようと思っています。

 今までいろいろ構想を練り上げた結果、今回も真空管を使ってのヒースキットQM-1のデッドコピー製作は先送りとなってしまいました、そのうちに実現したいものです。

  完

関連ブログ
 Qメーターの製作 1/3 (スタディと構想)

2016年4月23日土曜日

Qメーターの製作 2/3 (部品選定、予備実験、回路決定)

 さて今回は先回の全体構想に従って、部品選定、予備実験を行い、回路決定までこぎつけます。

 予備実験では左写真に見られるようにバラックセットを組みながらデーターを採り、実際にQ値を測定してみたいとおもいます。

 それではもう一度全体構想を掲げておきます。

 全体構想としては以下のとうりです。
  ① アマチュアのQメーターとして性能を欲張らない。
  ② Q値も絶対値の追及はほどほどにし相対的にチェックできればよし。
  ③ 出来るだけコンパクトにしたい。
  ④ 高周波源はシンセサイズド・シグナル・ジェネレーター(SSG)を使う。
  ⑤ 読み取りは100uAのメーターを使う。
  ⑥ 高周波電圧測定ユニットについては自作する。

 高周波供給ユニットは、シンセサイズド・シグナル・ジェネレーター(SSG)の出力を受け、直列共振回路へ高周波電力を歪なく供給する必要があります。

 受け側のトランスは、写真に見られるように、T50-43のトロイダル・コアに1次側は0.26mmφのエナメル線を50回巻き、2次側は1.5mmφの錫メッキ線をコアの中に通しただけのものです。

 






 決定した回路図を示します。
 Q値の測定には3dB法を用いるつもりですので、入力側に3dBのアッテネーター回路を入れておきました。こうすることで、メーターの振れに対する3dBの位置を容易に知ることが出来ます。

 トランジスタは小出力用のものを使えばよかったのですが、手持ちの関係で2SC1815Yを使用しました。この回路は、SSGからの入力(30MHzまで)約1.2Vまで歪なく動作していることをオシロスコープで確認してあります。
 SSG入力500mVのときトランスの1次側で約330mV,2次側で約6.5mVとなり330/6.5=50.7はほぼ巻き線比どうりです。

 高周波電圧測定ユニットはダイオードで検波した直流電圧をICを使用した電圧計で読み取ることにしました。

 低電圧領域での感度のよさを買ってゲルマニューム・ダイオードのSD-34を採用、倍電圧整流回路を形成しています。
 この出力は高インピーダンスで受ける必要があり、4.7MΩを使い、ICも入力抵抗1.5TΩのCA3140を使っています。CA3140は古いICですが入力抵抗も高く電源で使える、使い易いICで私はよく使います。

 回路中の帰還回路に入っている2個のダイオード・1SS16はメーターの直線性を改善するためのもので、私の場合この定数で10から100のメーター目盛りがほぼ直線になりましたが、個々にはカット・アンド・トライが必要でしょう。

  VC バリコン( Variable Condenser )の選定。
 実は今回一番苦労したのがこのバリコンの選定なのです。通常のエアー・バリコンは手持ちの一部だけでも左写真のように各種あります。

 Qメーターを出来るだけコンパクトにするには適当なものを選定する必要がありますので、VCを交換しながらQ値を測定していると数値が結構バラツクのです。

VCのQ値は十分に高いので無視していいものと頭から決めてかかっていましたが、必ずしもそうではないようでした。 そこで右回路図のようにコイル・Lを固定してVCを変更しながら出来るだけQ値の高いバリコンの選定を試みました。
 一言でいうと中古のVCは、キチンと箱や袋に入れて保管してあるものは良かったのですが、そうでないものは概して失格でした。そういえば昔よく見かけた測定器に使用してあるVCの多くは、ケースの中でもさらに囲ってあったのは単にシールド目的のみではなかったのでしょう。(反省!中古バリコンに手を出すな!)

 結論として高性能のエアー・バリコンも選定できましたが、簡易型のQメーターに使用するにはあまりにも高級すぎますので、今回新たにその性能を見直したポリ・バリコンを採用することにしました。左上写真の右下にあるのがそれで、ずいぶんコンパクトなのがわかります。

 ポリ・バリコンならすべて良いのではなく、左写真の中からさらに選定したのはミツミ電機の PVC-2K20T というものです。(写真右下の刻印参照)
 ミツミ電機は今から61年前の1955年にポリ・バリコンを発明し、一世を風靡したのを改めて思い出しました。ポリ・バリコンのQ値についてネットで調べてみましたが、改めて見直すような数字が出ていました、さすが日本の誇りミツミで決まりです。

 ちなみにLCRメーターで容量を測ってみましたが、① 6.3pF~344.1pF  ②6.3pF~346.1pF と二つのユニットがよく揃っていましたし、容量も申し分ありませんでした。
 そこで右回路のように2つのユニットをスイッチで並列に出来るようにしてみます。これで 12.6pF~690.2pF と、容量拡大が出来るはずです。

ということで以下は次回最終回、、、、

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2016年4月20日水曜日

Qメーターの製作 1/3 (スタディと構想)

 左写真に並んでいるのはネットで見つけた往年のQメーター( Q meter )の名機たちです。

 私たちがラジオなどを作る際のLC共振回路(下図参照)の性能は使用するコイルやコンデンサーで大きく変わります。
 









 左写真の上が可変容量コンデンサー( Variable Condenser 略してバリコンまたは VC )、下がベークライト・ボビンにエナメル線を巻いた自作コイルです。

 通常は、コイルの性能がLC共振回路に対する影響が大きいのですが、次の表に見られるように「Q」という数値で整理されています。
 この図は直列共振回路において共振周波数におけるコイルのQの違いでレスポンスが変化する様子を示したものです。

 コイルの性能が高いほど(Qが大きいほど)選択性が高くなります。ですから私たちが電子工作でコイルを巻いて自作するときにQ値を測ることが必要かつ重要になるのです。

 というのは「Quality(品質)」の頭文字をとった数値で単位はありません。

 Qそのものの定義などは難しいものがありますが、Qの値を測定することが何とか出来そうでしたので、構想から実験を経て何とか使えそうなものが製作できました。

 左図において0.5Ωの抵抗、コイルLそしてバリコンVCは直列共振回路を構成しています。
 今左側に、ある周波数の高周波電圧1Vをかけたとすると、0.5Ωの抵抗には49.5Ωの抵抗との分圧比で10mVが与えられることになります。(緑ポイント)
 ついでVCを操作してこの直列共振回路を供給された周波数に同調させると図の赤ポイントには、より大きな電圧が生じます。

 いま仮にその電圧が750mVであったとすると =750/10=75 となるのです。
 ただし、通常VCのQは大きい(2000以上)ので無視して、LのQは75とします。

右の写真はU.S.のヒースキット社( Heathkit )のQメーター(QM-1)です。
 1950年代の後半に発売されたとおもわれる超ロングセラー品で今でこそ稀にebeyで見かけるだけになってしまいましたが、一般市販部品を使用してのユニークな回路構成は我々多くのアマチュアをして「自作でクローンをつくろう!」という気にさせたものでした。関連技術情報は今でもネットで多く見られ、Qメーターを自作するには重要です。


 装置を正面から見て、メーターの左側は高周波供給ユニットで 150kHZ~18MHZ を4バンドに分けて供試コイルに供給しています。

 そして右側は直列共振回路同調用のVC容量調整ダイヤルと高周波電圧測定ユニット(真空管電圧計)があり、測定電圧を中央のメーターで読み取るようになっています。
 上図はそのイメージを表現したものですが、ヒースキットのQM-1は中央ブロックにある高周波電圧の抵抗分圧部分が、コンデンサーによる容量分圧になっているのが異なります。
 
 すなわち右図の左が Boonton や YHP などの測定器メーカーが古くから採用していた抵抗分圧、中央が前述の容量分圧そして右が今回採用したトランス方式で、最近の新しいQメーターでは多く使われているようです。


 ただ、どの回路も直列共振回路へ微小な高周波電圧を低インピーダンスで注入しようとしているのがわかります。

 高周波供給ニットについて言えば、コイルのQを測定する場合、左表のようにコイルのインダクタンス値によって測定周波数を特定する必要があります。
 このように広範囲にわたって、安定した高周波出力源を改めて自作するとなると大変な労力が必要で、ディスクリートで組んだり、いま旬のDDSやオッシレータICを使った例などなどありますが、ここは一気に手抜きして、シグナルジェネレーターの力を借りることにしました。

 任意の周波数と出力電圧を安定して、かつ高精度(アマチュアにとって)で得られるのですから使わない手はないでしょう。

 さらには、今回Qの測定には3dB法を採用したいとおもっているので、ディジタルで簡単に周波数と出力レベルを変化させることの出来る、このシンセサイズド・シグナル・ジェネレーター(SSG)は最適だとおもいます。

 3dB法によるQの測定は次のとうりです

 まず同調点(左図のf0)を求めます。次いで供給周波数を上側にズラシ出力が3dB下がった周波数をfHi とし、同様にから供給周波数を下側にズラシ出力が3dB下がった周波数をfLO とします。

 Qは

    Q=(Hi +LO ) / 2 * (Hi -LO ) として求められます。

 
 全体構想としては、
  ① アマチュアのQメーターとして性能を欲張らない。
  ② Q値も絶対値の追及はほどほどにし相対的にチェックできればよし。
  ③ 出来るだけコンパクトにしたい。
  ④ 高周波源はシンセサイズド・シグナル・ジェネレーター(SSG)を使う。
  ⑤ 読み取りは100uAのメーターを使う。
  ⑥ 高周波電圧測定ユニットについては自作する。

ということで以下は次回、、、、

関連ブログ
 Qメーターの製作 2/3 (部品選定、予備実験、回路決定)

2016年4月17日日曜日

簡易電圧標準の製作

 電子工作を趣味とするものにとって、電気の三要素のひとつである電圧を測定することは不可欠です。

 かつては電圧測定に左写真のようなテスター(47年前に製造されたものですが、まだ現役)を使用していましたが、最近ではもっぱら Digital Maltimeter が用いられるようになってきて、手軽に何桁もの数字がパラパラと表示できるようになって来ました。

 ところがテスターではまあこの程度か、、、で済ましていたものが、なまじ何桁もの数字を見ているとこの数字は本当に正しいのか?といった疑問がわいてきます。

 そんな折、ブログで標準電圧発生器なる記事を見つけ、これ幸いとトレースさせていただきました。

 要は基準電圧発生用のICに規定電圧・電流を与え発生する基準電圧を読み取るという話です。
 しかしながら今回使用したICは高精度4.096V±0.1% シャントレギュレータ LM4040AIM3-4.1 というもので、例の秋月で当たり前に?売られていました。
 米粒大のSOT-23パッケージで、表面にはR4Aと刻印されていますが、は基準電圧用、は4.096V、は±0.1%をそれぞれ示しています。

 回路図は示すまでもありませんが、左のようにきわめて簡単なものです。
 78L82とあるのは8.2V100mAの3端子レギュレータで、数年前一山いくらで購入してストックしておいたものが役立ちました。

 製作は両面スルーホールガラスコンポジット・ユニバーサル基板の切れ端の上に回路図どうり部品を並べたものです。


 写真で見るとICがいかに小さいかがわかります。



 使い方はきわめて簡単で、左側のミノムシクリップで+12Vを供給し、右側の端子の電圧を Digital Maltimeter で読み取るだけです。



 左写真は所有の Digital Maltimeter 3台の読み取り結果をそれぞれ撮影したものです。

 どれも年期を経ていますが何とか納得できる表示をしてくれてホッとしているところです。




 電圧の絶対値をそれも誤差±0.1%で出力してくれるのはなんともありがたいことです、それも1個¥50のICで、、、、