2017年3月1日水曜日

流氷・丹頂・カシオペア (4)

 いよいよカシオペアに乗車です。
 カシオペアというのは1999年に運行を開始した全席ツインA以上の言わばオール・グリーン寝台特急ですが、諸問題があり、すでに2016年3月に運行を終了していたのですが、人気が高く「カシオペア紀行」または「カシオペア・クルーズ」と称しての臨時便が存在していたのです。

 ところが上野から北海道に乗り入れるカシオペアはこの2017年2月いっぱいで完全になくなるということで各旅行会社がこぞって全車貸し切りの団体列車「カシオペア」を運行したのです。

 自称「鉄ちゃん」、、、いや鉄爺もこのことは知らず、旅行社に申し込んでからわかりましたが、普通に臨時便をJRへ申し込んでも1年以上順番待ちだったとか、、、、

 列車名のカシオペアは先輩の北海道直接乗り入れの寝台特急「北斗星」に倣ったということです。

 胸をときめかせて待つことしばし、カシオペアが入線してきました。牽引機関車はDF200-4でマニアに「赤スカのレッドベアのゼロ番(レッドベアはJR貨物がつけた愛称、バンパーが赤色で赤いスカート、製造番号が1桁)」と呼ばれるMTU(独)ディーゼルエンジン搭載の珍しい貨物用ディーゼル機関車です。

 ステンレス製にシルバー塗装された車両です。車窓が上下にあるのは1階、2階にそれぞれ個室があるからです、私たちは7号車の2階です。車体の5本線はカシオペア座の五つの星をイメージしているのでしょう。

札幌_白石   函館本線
白石_沼ノ端  千歳線
沼ノ端_長万部 室蘭本線
長万部_五稜郭 函館本線
五稜郭_木古内 道南いさりび鉄道
木古内_中小国 海峡線
中小国_青森  津軽線
青森_目時   青い森鉄道
目時_盛岡   IGRいわて銀河鉄道
盛岡_上野   東北本線

 16時38分発のこのカシオペアは札幌-上野間の1214kmを多くの路線を通り、19時間14分で長躯します。

 一般的には自分が乗車している列車は撮ることができませんが、人気の高さから大勢のカメラマンが沿線に見られたことからもしやと思ってネット上をあちこち探してみました、、、ありました!!ここはマニア間では有名な菊水カーブ(苗穂~白石)と呼ばれる札幌を出発してすぐのところです。
 架線が見えているのにディーゼル機関車?というのは途中に未電化区間があるからです。


 カシオペアは12両の客車とこれを牽引する機関車で編成されていますので、軌道幅が同じ線路のあるところならどこへでも行けます。

 右上図、上野へ向けての先頭1・2号車はカシオペア・スィート、3号車は食堂車(ダイニング・カー)、4から11号車はカシオペア・ツインそして最後尾12号車は展望車(ラウンジカー)です。ラウンジカーは展望のためのみならず、ディーゼル・エンジンが搭載されており、機関車が無くてもこの列車の暖房、照明ができるものと思われます。


 客室内の様子です。
 左上は通路で、おおむね北・西に面しており、大人がすれ違うのは少し窮屈ですが、あのアガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」のシーンにあるように寝台列車特有の何かを感じさせます。

 上中は2階個室に上がる階段で4ステップあり、1階の場合は下に下がります。

 上右は室内から入口ドアを見たところ、右側は洗面・トイレで、天井に頭はつかえませんが広くはありません。 下左は洗面・トイレで、洗面台は鏡の下の壁面に折りたたまれています。

 下中・右は座席・物入れ棚でテーブルをたたみシートを伸ばすとベッドになります。窓は2階席なので曲面です。シェードも窓に沿って降りてきますが夏は暑いことでしょう、でも車窓からの景色を楽しむにはやはり2階席がベスト!

 寝台列車の旅ともなれば食堂車でしょう。幸い家人の機転であらかじめレストランの予約を申し込んでおいてたすかりました(予約はディナーとモーニングがセットになっていました)。

 なにせ左写真(ネットから引用、座席が異なっています)にあるように28席しかなく、これの時間3部制なのですから、1回分定員がカシオペアの車両1台分しかありませんので客室で弁当を食べるしかないツアーの他メンバーからずいぶんうらやましがられました。

  食堂車でのサービスは、この世知辛い中でどんどん低下する世の流れに反し、さすが日本レストランエンタープライズ(旧日本食堂)だけあって洗練され、心行き届いたおもてなしを受けることができました。

 早速料理ですが、団体さんということでメインはフランス料理と決まっていて選択できません。 
 サラダ、魚料理、ビーフ・シチューそしてデザートです。


 車内で揺られながらのディナーは二人とも初めてですが、追加した「おたるワイン」も手伝ってひさしぶりにおいしく、楽しい時間を過ごすことができました。ちなみに食器はウエッジウッドでした。

  
 途中列車が徐行したので外へ目をやるとちょうど長万部の駅を通過するところでした。



 






 このあと五稜郭駅で機関車を付け替え、青函トンネルに向かいますがこの理由について述べておきます。

 前述したようにカシオペアは千歳空港や室蘭などに近い千歳線、室蘭本線を経由しますが、この区間には未電化区間がありますのでディーゼル機関車が必要になります。

 そして五稜郭駅から青森駅までを広い意味の海峡線と言いますが、その中の左地図赤線の青函トンネルは新幹線(標準軌)と貨物線(狭軌)が3本のレール(1本は共用)を用い運行しています。
 また青函トンネル内は防火上、救援車両を除いて、ディーゼル車の自走はできませんので電気車のみとなります。ところが青函トンネルを走る貨物線新幹線と同じ25,000V・交流の架線電圧を使わねばなりませんが、五稜郭-木古内、新中小国信号場-青森(左地図紫線)の区間は20,000V・交流架線電圧なのです。

 その後青森からは盛岡-黒磯の区間は20,000V・交流、黒磯-上野の区間は1,500V・直流となっているのです。

 左地図左は、五稜郭駅での機関車付け替えの説明図です。
 上方から来たDF200-4ディーゼル機関車(赤丸)に牽引されたカシオペアは五稜郭駅に入り、ここでDF200-4を切り離し、最後尾の展望車側に25,000V・交流、20,000V・交流どちらでも走れる貨物用電気機関車(紫丸)を連結し、前後逆になったカシオペアは海峡線へと向かいます。


 右はその連結作業を展望車で見物していたときの写真です。夜遅く、寒い中、何人かのマニアが撮影に来ていました。

 やがて機関車がやってきて、連結されました。EH800-2というJR貨物の25,000V・交流、20,000V・交流どちらでも走れる貨物用電気機関車です。
 こののちしばらくして発車しました、そして青函トンネルです。


 青函トンネルは津軽海峡の海面下140mの海底下約100mに掘られた交通機関用のトンネル全長約53.9kmです。開通は1988年、JR北海道の管轄です。

 先の地図上の赤線で示したのが青函トンネルで、この中に今は使われていませんが、竜飛海底駅と吉岡海底駅があります。真夜中近く青函トンネルの全区間を車窓から眺めていた物好きは私たちくらいのものでしょう。

 そして青森駅でも五稜郭駅と同様に機関車を付け替え(前述地図右参照)、列車の進行方向を再度変更して上野を目指します。ちなみに付け替えた機関車はEF81-98(25,000V・交流、1,500V・直流共用)だと後で知りました。


 寝台車の寝心地は必ずしもいいものではありませんでしたが、旅の疲れも手伝って目を覚ましたときは明け方でした。

 部屋に届いたモーニングサービスのコーヒーをもって展望車に行ってみると既に何人かが早朝の景色を楽しんでいました。次々と変わっていく朝もやに包まれた景色はまさに寝台列車ならではでしょう。

 陽が昇ってくると雪の残った、まだ春遠い東北の景色がはっきりとしてきました、そろそろ朝食の時間です。












 メニューは特に変わったものはありませんが食堂車の雰囲気がよりおいしく、楽しく食べさせてくれるようです。好物のフルーツ入りヨーグルトがあったのですが、お猪口くらいの小さな器で、我家で食べる半切りリンゴにヨーグルトをたっぷりかけた大きな器と比較して思わず笑ってしまいました。

 オーダー時に「コーヒーは食後にお願いします」と頼んでおいたものが少し早めに配膳されました。
 食事のペースを見ていたのでしょう、食事が終わりかけたときにウエイトレスが「コーヒーが冷めてしまったようですので、、、、」と熱いコーヒーに交換してくれましたが、そのサービスに感嘆しきり、、、、


 併走して北上する東北新幹線でしょう、遠くに見える山々は雪で真っ白です。

 関東圏に入ってきましたが、カメラ・アングルのよさそうな堤防や橋の上などには必ずと言っていいほどに大勢の人たちがカメラを構えて待ち構えていました。

 この臨時便でさえ詳細なダイアがネットでわかるのを後で知りました、カシオペアの絶大な人気を再認識しました。

 この列車は札幌・上野間では都合で停車することはあってもドアは開きません、と聞いていましたので大宮で何人かが降車したのでオヤと思いました。東京地区の参加者で、大宮での降車希望が多かったのでしょう、ホームから皆さん笑顔で手を振りながら見送ってくれました。

 たまたまホームにあった列車案内を見つけました、ただ「団体」としか書いてありませんでした。


 約19時間で終点上野に到着です。
 最高速度が110km程度ですから今の時代では鈍行?でしょうがゆっくりと時間をかけた旅もいいものだと思いました。 

 到着後急いで牽引機関車を見に行きました、赤いボデーに白い流れ星描かれた北斗星塗色のEF81-98でした。


 もちろん今の時点でカシオペア塗色は望むべくもありませんが、真面目に?トレインマークをつけて走ってくれただけでも良しとせねばなりません。


 例によって無計画で、衝動的に参加したツアーだったのですが、流氷・丹頂・カシオペアと十分に満足で心にのこる旅でした。

  ―― 完 

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