2012年12月2日日曜日

廉価なDMMをデータロガーに改造する


 電子工作関連の分野でネットサーフインをしていたら面白い記事に目が留まりました。廉価なDMM(ディジタル・マルチ・メーターつまりディジタル・テスター)を改造してデータロガーにするというものです。
 そこそこ高級な?DMMは読み取った数値をパソコンに送って経時変化をグラフ化したりデータ処理する、いわゆるデータロガー機能があります。

 しかしながら廉価(野口英世さん一枚)のDMMでこれが可能になるとはいったいどういうことなのでしょう。
 早速、気合を入れてしらべて(ググッて)みました。なるほどこれはもう7,8年前からおこなわれており、またこのことはことのほか人気があって、今もおおくの人たちがトライしているようです。ということは再現性があり、成功率が高いと言う事でしょう。
 さらには母体となるDMMが長期にわたって供給されているのも見逃せません。これを取り扱っている、私もよくお世話になる秋葉原の○月電子さんに感謝です。


 冒頭の写真は改造したDMMです。下右に外部出力(RS232)ON-OFFスイッチが、右下にパソコンにRS232で接続するためのジャックが、それぞれ矢印で示してあります。外形はオリジナルと見た目ほとんど変わりありません。

早速分解してみました。使用しているLSIはFS9711-LP3なのですが、ネットでデータシートを探しても見つかりません。「FS9721-LP3が改良バージョンで同様だ」との記事をみつけ、ダウンロードしました。右図がそのなかに掲載されているアプリケーションです。

 なるほど、プリント基板では図中に赤矢印で示した、64ピンのTXDと84ピンのENTXが未使用のままになっています。
 ということは、「LSIは高級品?と同様なものを使い機能のみ殺しある」と言う量産品によくあるパターンです。かつては「高級品はオプションをつける!」といったことでしたが、最近は「廉価品はオプション機能を殺す」と言ったも多いようです。

 やるべきことが見えてきました。
84ピンのENTX(enable TXD)とGNDのあいだにデータを取り出すときにショートすべきスイッチを接続します。
 つぎに64ピン(TXD)から赤いまるで囲ってあるフォトカップラー(わたしは手元にあったPC817を使用)経由で抵抗 1kΩ を介し VDD(電池の+側でかつ電源SWのあと)に接続します。そしてフォトカップラーの二次側にパソコンへ接続するための抵抗とジャックをとりつけます。
 左上はDMMの基板で、LSIが装着されている側です。
 なにせこの100ピンLSIはピン間隔が1mm以下ですので、そろそろ怪しくなってきた私の視力では、半田付け作業も限界に近いです。(右の白いまるがLSIへの半田付け場所)

上写真は基板の裏側に両面テープで接着したフォトカップラー PC817 です。必要な1/8Wの抵抗が2本じか付けされています。

 次いでケースの加工に入ります。ケースはプラスティックでドリル、ヤスリ、カッターナイフなどで簡単に加工できますので、ゆっくりと時間をかけ、傷をつけないように注意をして作業します。
 左写真の大きな部品がジャック(オーディオ用のモノーラルジャック)小さい部品が超小型のスライドSWです。


 右は外側から出来具合を見ているところです。最初からあったように、自然で、我ながらよい出来です。
あちこちに気を配り、慎重に再組み立てをします。そして電池を入れ、息を詰めて POWER-ON ! いつもながら緊張の一瞬です。

 とりあえず左写真のように無事に電源が入りました。セレクタースイッチを回しても特に異常は無いようです。

 そして、もう一度息を詰めて、今回増設したスライドSWをonにします。すると右の写真のように AUTO という表示の上に RS232 という表示が追加されました。おそらくこれでシグナルが送り出されていると思います。

 そこで次は実際にパソコンと接続してみます。左写真のように接続用のコネクターを作製し、接続します。RS232のようなレガシーポートはいまどきのパソコンにはついていない場合が多いのですが、私のは古いので、、、、
 しかしながら、計測の世界ではRS232はまだまだ現役です。次にパソコンを導入するときも私はRS232ポートつきを探します。(もちろん現役でもついているのがあります。)どうしても無いときは、RS232-USB 変換をして接続すればいいのです。


 もうひとつ問題があります。それはこのLSIが送り出すデータは符号化されていて(WENS 20T フォーマット)、ハイパーターミナルやteratermなどでは受信は出来るのですが、怪しげな文字がパラパラ並ぶだけです。

 そんな時、これもネットからユーティティーソフトがフリーでダウンロードできました。作者の方に感謝です。
 Ts Digital MultiMeter Viewer というのがそれです。上は実際に計測しているときのパソコン画面です。このように、経時変化、アナログメーター表示、ロギングなど多くのの機能が盛り込まれています。

 そして計測データは好みのファイル( .txt や .cvs )に落とす事が出来ますので、あとでゆっくり作業できます。

 左は .cvs ファイルで落として、ご存知EXELでグラフ化したものです。ちなみに10秒、17秒付近のノイズと思しきデータは上のリアルタイム表示にはありますが、EXELのグラフでは編集時削除してあります。

 また、見飽きたEXELのグラフのかわりに、別のグラフ作製ソフトをトライしてみました。これなら一般的に使えそうです。

 ということで、当初の目的は達成できました。
その後、「 WENS 20T フォーマット」なるものが判明したので、ようやく慣れてきた Ardiuno を使ってSDメモリにデータを格納できるようにしたいと思っています。

 今回の改造記事はこんな事になりました、ということで決して改造を推奨するものではありません。わけても、DMMは使用中どのような回路に接するかも知れず、安全上厳しい制限があるように聞いていますので、もしトライされる方はあくまでも自己責任ということで、、、、


3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

有用な情報、ありがとうございます。
解像度はどのくらいなのでしょうか?
8bit 256階調でしょうか?
12bitあるといいのですが。それとサンプリング周波数はどのくらいですか。
3秒間くらいのアナログ信号を捉えてみたいと思っています。

悠悠櫻 さんのコメント...

 拙ブログをご覧いただいてありがとうございます。

 あまり知識がないのでよくわかりませんが、使用LSI相当(FS9721-LP3)のデータシートから調べてみました。

 解像度?は4000カウント(3・3/4ディジット)とありますので10bit?くらいでしょうか。またサンプリングは1秒間に3回とありました。

 このテスターのLSIはより古いFS9711-LP3ですので、スペックは上記以下で、かつ製品テスターのスペックも同様だと思います。

 さらに実際に使用してみたところサンプリングの1秒間に3回はできているようですが、3秒くらいの変化を測定するには少々苦しいかと、、、、

匿名 さんのコメント...

早速のご返事ありがとうございます。1秒に3回は少し遅いですが、10ビットでしたら、こちらはけっこう精密な測定ができますね。
データロガーはまともに買うととても高価ですので、こちらで掲載された情報はとても”高価”です。
ありがとうございました。千葉市 熊谷