このタイプのラジオ(トランスレス・ラジオ)は感電の危険がありますので、ラジオと家庭用コンセントとの間に絶縁トランスを必ず入れてください。
ハリクラフターズ社とは 1930年代から1980年代までの約50年間、第二次大戦をはさんで名声をはせたアメリカのラジオ・無線機メーカーです。
ハリクラフターズ社とは 1930年代から1980年代までの約50年間、第二次大戦をはさんで名声をはせたアメリカのラジオ・無線機メーカーです。
ハリクラフターズ S-38 は戦後間もない1946年から1961年までの15年間にわたって発売されたS-38シリーズの初代で、以降 S-38A から S-38F まで次々とニューモデルが発表されていきますが、無印の S-38 が、BFO発振器も独立して内蔵した最高の機種で、年代と共に機能の省略化・低コスト化が進み、やがて S-38 のコピー商品を引っさげてUS市場に登場した日本製品に駆逐されていきます。
左は1947年当時の S-38 の商品カタログで定価47.5ドルとあります。
過日入手しておいた、このハリクラフターズ S-38 (写真右)をいよいよレストア(修復)しようと思い立ちました。
この S-38 の人気はその軽快な性能は勿論ですが、このフロントデザインがフランス人で米国で活躍したデザイナー、レイモンド・ローウィ( Raymond Loewy )のものであることにもよります。(幅330x高さ170x奥200)
本機は70歳にもなるお爺さんなのでそこそこ錆も浮いてきていますし、中央のハリクラフターズの社章も名誉?の向こう傷があります。
正面左上には MODEL S-38 とあり、右上には the hallicraftars co. の文字が読み取れます。(最初の t の字が消えていますが)
右写真は裏側からのものです。GT管と呼ばれる真空管が見えていますが、黒く背の低いのはメタル管、右側のガラス管はその改良品です。
これらカバーの材質は3~5mmのボール紙ですし、デザインもネットで紹介されていますので、そのうち作成してみましょう。
S-38 はその原型が1941年初頭発売のエコーフォン・コマーシャル EC-1にあり、回路コンセプトは基本的に同じで、 S-38F まで延々と引き継がれていますのでレストアの情報はたくさんあるといっていいと思います。
左にあるのはそのひとつ、マニュアルで今回はこれを主に用いました。
右はマニュアルにあった回路図です。
特徴は
① GT管によるトランスレス方式で、ライン・アップは 12SA7 (周波数変換)- 12SK7(中間周波増幅)- 12SQ7(検波・低周波増幅)- 35L6GT(低周波出力)- 35Z5GT(整流)- 12SQ7GT(BFO発振)の5球スーパー + BFO発振の計6球構成です。
ちなみにこれらの数字を足すと118となりますので、このラジオは米国の家庭用電源110~120Vで使用するようになっていることがわかります。
② 受信周波数範囲は BAND1 540kc-1650kc、BAND2 1650kc-5.0mc、BAND3 5.0mc-14.5mc、BAND4 13.5mc-32.0mc の4バンドです。
③ この受信機の位置づけは海外短波放送のイージー・リスニングだとおもいます。第二次大戦で勝利した米国は自国での戦闘はなかったものの、世界中へ派兵した結果、それこそ世界各地の情報に大きな興味を持ったことでしょう。
S-38 は見た目こそ通信型受信機ですが、中身は家庭用の5球スーパーラジオだとおもいます。
このことは S-38 の価値を下げるわけではなく、誰もが簡単に遠く海を越えてくる情報に接し得たことの意味は大変に大きかったものとおもいますし、多くの青少年が S-38 に触れる事で科学技術分野に興味を持ち、その発展にも貢献したことでしょう。
③ この受信機の位置づけは海外短波放送のイージー・リスニングだとおもいます。第二次大戦で勝利した米国は自国での戦闘はなかったものの、世界中へ派兵した結果、それこそ世界各地の情報に大きな興味を持ったことでしょう。
S-38 は見た目こそ通信型受信機ですが、中身は家庭用の5球スーパーラジオだとおもいます。
このことは S-38 の価値を下げるわけではなく、誰もが簡単に遠く海を越えてくる情報に接し得たことの意味は大変に大きかったものとおもいますし、多くの青少年が S-38 に触れる事で科学技術分野に興味を持ち、その発展にも貢献したことでしょう。
左上写真はシャシー上の部品配置、左下写真はシャシー内の様子です。
これらは前述したように、1941年初頭発売のエコーフォン・コマーシャル EC-1のスタイルを踏襲しています。
シャシー内を観察した結果、限りなくオリジナルに近く、手が加えられていないように見受けました、うれしいことです。(抵抗やコンデンサーの交換は必要でしょう)
ダイアル・パネルは右上写真のようになっており、左がメイン・スケール、右がスプレッド・スケールです。
各々の指針はバリコンの軸に直結しており、操作上はダイアル軸から糸でバリコン軸にセットされたプーリーを減速しながら回す構造で安価かつ確実でよいフィーリングの得られるシステムだとおもいます。
これらは前述したように、1941年初頭発売のエコーフォン・コマーシャル EC-1のスタイルを踏襲しています。
シャシー内を観察した結果、限りなくオリジナルに近く、手が加えられていないように見受けました、うれしいことです。(抵抗やコンデンサーの交換は必要でしょう)
電源系をテスターで慎重にチェックしたのち絶縁トランスを介した電源(110V)に接続して様子を見ました。
よかった点は無事パイロット・ランプと真空管が点灯したこと、よくなかった点は大きなハム音のみしか聞こえなかったことでした。ということで意を決してフル・オーバーホールをすることに決めました。
ダイアル・パネルは右上写真のようになっており、左がメイン・スケール、右がスプレッド・スケールです。
各々の指針はバリコンの軸に直結しており、操作上はダイアル軸から糸でバリコン軸にセットされたプーリーを減速しながら回す構造で安価かつ確実でよいフィーリングの得られるシステムだとおもいます。
左写真はバリコン(バリアブル・コンデンサー)で特徴的なのはスプレッド機構(小さいプーリー側)が内蔵されている点です。
このバリコンの容量をLCRメーターで測定してみましたがANT側とOSC側がよく揃っていました。
このバリコンの容量をLCRメーターで測定してみましたがANT側とOSC側がよく揃っていました。
メインバリコン スプレッドバリコン
ANT 435.3(max) 251.9 67.86 34.78(min) 435.5-414.2 34.76-13.48
OSC 433.5(max) 252.4 67.26 34.24(min) 433.5-414.0 34.25-13.78
また既知のインダクタンス値のコイルでQをチェックしてみましたが新しいバリコンと比較しても問題はありませんでした。70年前の部品の精度と耐久性に驚かされました。
最も心配していたバリコンが使えそうなので、次いでIFTです。
ANT 435.3(max) 251.9 67.86 34.78(min) 435.5-414.2 34.76-13.48
OSC 433.5(max) 252.4 67.26 34.24(min) 433.5-414.0 34.25-13.78
また既知のインダクタンス値のコイルでQをチェックしてみましたが新しいバリコンと比較しても問題はありませんでした。70年前の部品の精度と耐久性に驚かされました。
最も心配していたバリコンが使えそうなので、次いでIFTです。
写真に見られるようにC同調タイプでした、パッディング・コンデンサーの劣化が心配でTTTさんのブログにあった「管球式IFTの測定ツール」を引用させていただきFRMSと組み合わせてチェックした結果無事作動することがわかりました。
左写真は測定中の様子です。
右写真は上がアンテナコイル、下が局部発振コイル(局発コイル、OSCコイル)です。各バンドのコイルは同じボビンに巻かれています(BAND4のANTコイルのみは別)し、分厚いワックスで保護(IFTコイル、BFOコイルも同様)されています。
銀メッキが酸化して黒ずんでいる部分が多かったので軽く磨いてごく少量の接点復活剤を塗っておきました。
右写真はCW(無変調の電信電波)を聞くためのBFO回路に使うコイル(367uH)で、周波数調整はコイル中のコアをネジで出し入れすることでおこなっています。
右写真はCW(無変調の電信電波)を聞くためのBFO回路に使うコイル(367uH)で、周波数調整はコイル中のコアをネジで出し入れすることでおこなっています。
この S-38 で使われているツマミで大が2個、小が3個あります。
大きいツマミの裏に
大きいツマミの裏に
HALLICRAFTARSの文字が見られますが、オリジナルのパーツが揃っていることはレストアにはうれしいことです。
取り外した抵抗(左)とコンデンサー(右、右下)です。
抵抗はソリッド抵抗器と呼ばれるものが使われていました。丈夫で断線もせず、高周波特性もいいのですが温度係数が大きく、経年変化に弱いので今ではあまり見かけません。
抵抗値を実測してみると平均して2~3割大きくなっており、中には5割を越える物もありましたのですべて通常のカーボン抵抗器に交換しました。
コンデンサーは数値そのものはあまり変わっていませんでした。上列のペーパー・コンデンサーはすべてフィルム・コンデンサーに交換しましたが、下列のシルバード・マイカ・コンデンサーとオレンジドロップはそのまま使いました。 もちろん右写真のブロック電解コンデンサーも交換です。
左は部品清掃後再取り付け、交換、再配線をした後のシャシーの中の様子です。
オリジナルに比べ多少すっきりした感じがします。(前述写真参照)
いよいよ調整に入ります。 S-38 と家庭用コンセントとの間に絶縁トランスを入れ安全を期しました、100V:110Vで S-38 には110Vが供給されていることになります。
調整はマニュアル中の手順に沿い、IF調整に始まって、BFO周波数あわせ、BAND 4、BAND 3、BAND 2、BAND 1、の順に実施していきます。
手元にSSGがありましたので難なく終了しました。
その結果すべてのバンドにおいてダイアル指針どうり、ピッタリとなり、調整の容易さと再現性の高さに再度驚かされました。
実際に使用してみました。
数mのアンテナを窓に垂らしダイアルを回してみました。もちろんHAMバンドなどは実用になりませんが、すべてのバンドがごく普通に聞こえます。
今の技術をもってすれば容易に高性能化できるとはおもいますが、1947年のラジオ(当時の誰でもが容易に海外短波放送がきけるというコンセプト)にできるだけ近い形にしておきたいという当初の目的は達成したとおもいます。
夜照明を少し落としてタングステン・ランプに照らされたダイアル表示をみながら海外短波放送(今はかつてのVOAやBBCなどはなく東南アジアのものが多いですが)を聴いているとノスタルジックな感じがします。
そうですこれは70年前のラジオなんですから、、、、
取り外した抵抗(左)とコンデンサー(右、右下)です。
抵抗はソリッド抵抗器と呼ばれるものが使われていました。丈夫で断線もせず、高周波特性もいいのですが温度係数が大きく、経年変化に弱いので今ではあまり見かけません。
抵抗値を実測してみると平均して2~3割大きくなっており、中には5割を越える物もありましたのですべて通常のカーボン抵抗器に交換しました。
コンデンサーは数値そのものはあまり変わっていませんでした。上列のペーパー・コンデンサーはすべてフィルム・コンデンサーに交換しましたが、下列のシルバード・マイカ・コンデンサーとオレンジドロップはそのまま使いました。 もちろん右写真のブロック電解コンデンサーも交換です。
左は部品清掃後再取り付け、交換、再配線をした後のシャシーの中の様子です。
オリジナルに比べ多少すっきりした感じがします。(前述写真参照)
いよいよ調整に入ります。 S-38 と家庭用コンセントとの間に絶縁トランスを入れ安全を期しました、100V:110Vで S-38 には110Vが供給されていることになります。
調整はマニュアル中の手順に沿い、IF調整に始まって、BFO周波数あわせ、BAND 4、BAND 3、BAND 2、BAND 1、の順に実施していきます。
手元にSSGがありましたので難なく終了しました。
その結果すべてのバンドにおいてダイアル指針どうり、ピッタリとなり、調整の容易さと再現性の高さに再度驚かされました。
実際に使用してみました。
数mのアンテナを窓に垂らしダイアルを回してみました。もちろんHAMバンドなどは実用になりませんが、すべてのバンドがごく普通に聞こえます。
今の技術をもってすれば容易に高性能化できるとはおもいますが、1947年のラジオ(当時の誰でもが容易に海外短波放送がきけるというコンセプト)にできるだけ近い形にしておきたいという当初の目的は達成したとおもいます。
夜照明を少し落としてタングステン・ランプに照らされたダイアル表示をみながら海外短波放送(今はかつてのVOAやBBCなどはなく東南アジアのものが多いですが)を聴いているとノスタルジックな感じがします。
そうですこれは70年前のラジオなんですから、、、、
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