2017年1月20日金曜日

未完成交響楽

 新年早々またまた古い映画を観てきました。
 「未完成交響楽」という1933年のドイツ/オーストリア映画です。

 物語は、あのフランツ・シューベルトの交響曲第7(旧8)番である『未完成交響曲』ロ短調D759にまつわる物語(フィクション)を映画化したもので、なぜか本場のドイツとは裏腹に日本での公開(1935)においては好評で名画とたたえられたようです。

監督と主な出演者は次のとうりです。

監督    ウィリー・フォルスト
出演者
ハンス・ヤーライ   シューベルト
マルタ・エゲルト   カロリーネ(公爵令嬢)
イーゼ・ウルリッヒ  : エミール(質屋の娘)

 冒頭映画の題名を「未完成交響楽」と紹介しましたが、原題はLeise flehen meine Liederと言い、これはシューベルトのセレナーデ(Ständchen)の歌詞の最初のフレーズそのものです。

Leise flehen meine Lieder
durch die Nacht zu dir;
ひめやかに闇をぬうわがしらべ

in den stillen Hain hernieder,Liebchen, komm zu mir! 
静けさは果てもなし来(こ)よや君

 右は映画の冒頭に出てくるタイトルです。バックにあるウィーンの遠景がなかなかいい感じです。


 あらすじは「質屋通いをするほど貧しい助教師で作曲家でもあるシューベルトが、侯爵婦人のサロンでピアノ演奏を行ったのをきっかけに姪の伯爵令嬢の家庭教師になり、やがて2人は恋に落ちるが、親の反対で彼女は軍人と結婚することになってシューベルトは失恋する、、、、」というものです。

 左は教室で数学を教えているシューベルトが我知らず黒板に「野薔薇」を作曲して、これを生徒たち(ウィーン少年合唱団)が歌う、、、、と言うシーンですが、遥か昔教科書で見たシューベルトにそっくりで驚きました。

 ハンガリアの伯爵邸へ音楽教師として招請されたシューベルトが令嬢に真面目にレッスンするシーンで、ここで歌われるのが題名となった「シューベルトのセレナーデ(Ständchen)」です。

 ただこの楽譜には「愛らしき質屋の少女に捧ぐ」とあり、彼女は少々おかんむり、、、、そしてこののち二人は恋に落ちていきます。

 このシーンは村祭りの日、酒場にいるシューベルトのところへ村娘に扮装した令嬢が現れ、ハンガリー・ジプシー風の曲を歌い、踊りする場面です。

 ここで歌われた歌の題名はわかりませんでしたが、この映画のために作られたとのことでシューベルトの楽曲で埋め尽くされている中で負けず・劣らず・すばらしく、強く心に残りました。


 そしてもうひとつ、広大な麦畑の中で二人が愛を確かめ合うこの有名なシーンはある意味クライマックスで、こののち二人の様子を知った父伯爵の意思によって悲しい別れとなって行きます。

 こののちウイーンに戻されたシューベルトの悶々とした日々、これを何とかしようとする質屋の娘、そうした中ハンガリアから女性の手による「急ぎ来られたし」の手紙を受け取ります。そして駆けつけた彼が見たのは伯爵令嬢の結婚式でした。

 手紙は伯爵令嬢の妹からで、話を聞くと、披露宴の席でかつて伯爵令嬢がシューベルトのピアノ演奏中中断した交響曲のモティーフ披露宴であらためて全曲演奏してほしいと言うのです。

 彼は快諾し、演奏を開始しますが、曲がかつてと同じところまで来たとき、彼女は悲嘆のあまり失神し、またしても演奏は中止のやむなきに至りました。

 そして彼はスコアの残りを破り捨て、左シーンのように書くのです。

 Wie meine Liebe nie zu Ende gehen wird, so soll auch diese Musik nie zu Ende gehen  『 わが恋の終わらざるがごとくこの曲も終わらざるべし 』

 この映画は全編に「未完成交響曲」「菩提樹」「野薔薇」「セレナーデ」「アヴェマリア」などシューベルトの楽曲がちりばめられ、のちのサウンド・オブ・ミュージックやマイ・フェア・レイディなど音楽映画の原点だとも言われています。ちなみに交響曲と交響楽は同意で日本語の創作者は共に森鴎外だとか、、、、

 右はこの映画で伯爵令嬢を演じたマルタ・エゲルト(Martha Eggerthレコードジャケットです。
 映画が終わったあともずっと耳に残っていたほどのすばらしい歌声でしたので調べてみたところ、彼女はハンガリー出身、1912年生まれの女優・歌手でした。(YouTube で歌声を楽しむことができます。)

 古いこのような映画はモノクロで、画面も狭く、そのうえ音声もノイズだらけのモノーラルで、際立ったシーンも無いのにこのように気分爽快になることができるのは何故でしょうか。
 クラッシック映画万歳!!!

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