ジャコメッティ展を観てきました。
いきなりオークションの話です。この秋、一ヶ月ほど前にダ・ヴィンチがキリストを描いたとされる「サルバトール・ムンディ(救世主)」がこれまでの記録(ピカソ)の約2倍である508億円で落札されたのも耳新しいのですが、彫刻作品はどうかと調べてみたらジャコメッティの彫刻「指さす人」(1947年)が2年前、170億円で最高値でした。
ジャコメッティといえばあの異様に細長いブロンズ像が想い起こされます。
左はジャコメッティ展のポスターに使われた「ヴェネツィアの女」、9体の女性像のうちの6体ですが、まさにこれぞジャコメッティです。
そして右が「歩く男」です。
彫刻界のいわば人気トップにあるジャコメッティ展が開催され、さらに彫刻の撮影コーナーもあると言うことで早速出かけてきました。
ジャコメッティ( Alberto
Giacometti 1901-1966)は、スイス生まれで、1922年以降パリを主な活動拠点とした芸術家です、左写真はWikipediaよりの引用です。
当初の抽象芸術から離れ、「見たものを見えたままに表現する」具象表現へ作風転換していったジャコメッティは、この頃から極端に細長い人体像を製作しはじめました。
そして多くの芸術家や評論家たちに認められたのが1948ということで、彼の47歳のときでした。
ただ彼の悩みは「見たものを見えたままに表現する」と、何故か作品は極端に小さくなってしまい、せめて高さだけは、、、と思って造ると今見られるような細長いものが出来上がってしまったのです。
これらの流れを念頭において今回の展示を鑑賞したのちに、このかたちはジャコメッティの感性の創造物であり、このことを芸術と言うのだろうと私なりに理解できたような気がしました。
今回のブログにある写真は写真撮影が許可された部屋で撮影したもので、ここに展示してある作品はチェース・マンハッタン銀行からの依頼を受けて、ニューヨークの広場に展示するために制作された「歩く男Ⅰ」「女性立像Ⅱ」「大きな頭部」の3点の大作および「犬」と「猫」です。
左の「女性立像Ⅱ」はさすがに大きく、高さは2.7mもありますが、極端にスリムです。
また「歩く男Ⅰ」も高さは1.8mあり、右写真でその大きさを知ることができます。
下は3点目の「大きな頭部」ですが、それでも1m近くあり、ジャコメッティの作品としては巨大な部分に属します。
左下の写真はジャコメッティがこの作品を創作中のものですが、大きさがリアルに分かります。
しかしながら、残念なことに、これら3点をニューヨークの広場に展示する計画は実現せず、最晩年の作品と言うことになってしまいました。
ジャコメッティの作品の中では動物はあまり多くないようですが、この写真撮影が許可された部屋には「犬」と「猫」がありました。
「犬」はジャコメッティ自身の回想のなかに、「悲しい気持ちで雨の中をうつむいて歩いているとき、自分は犬のようだった」と言うのがあり、この作品はまさにその孤独が突き詰められ、表現されています。
また「猫」は弟のディエゴのアトリエに居たもので、毎朝ジャコメッティのところへ歩いてくるのを表現したものだそうです。
頭だけ仔細に表現されているのはまさに彼が「見たものを見えたままに表現する」とした結果なのでしょう。
今回は難解な鑑賞でしたが、いろいろ思考しながら作品を撮影する機会もあり、以前に比べてジャコメッティを少しは近くに感じられるようになった気がしました。
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