2024年3月12日火曜日

ウクライナからの部品で FLUKE 8842A リペア

 おかげ様で日々大好きな電子工作に明け暮れていますが、その際に使うディジタル・マルチメータ は必須です。
 これらはできれば信頼性の高いものが良いのです、幸い私のところにはこの分野での御三家ともいわれる、(左写真上から)FLUKE 8842A、KEITHLEY 2010、Agilent 34401A が控えていますが、これには訳があります。

 これらの測定器はある程度の精度正確さを求めるならば、自動車の車検のように、一定期間ごとに校正をする必要があります。しかしながら、われわれアマチュアにとって、リース落ちなどで手に入れたこれらの機材に正規の校正はあまりにも高額です。

 むしろこのように3台を所持し、お互いの測定値を比較していれば、そこそこの安心感を保つことが出来るのではないかと考えています。

 ところが、また別の悩みがあります。それはこれらの高級?機材が世に出された時代には、例外なく蛍光表示管が使われており、それらが今となって劣化してきたのです。(右写真)

 機材の精度などは保たれているのですが、表示がどんどん暗くなり、最後には見えなくなってしまうのです。このブログで以前紹介した「HP53181Aカウンター用7seg LEDモニタの製作」もその例・解決策です。

 原因は蛍光表示管に必要な電源回路(ほどほど高圧)の劣化は論外ですが、蛍光を発生させるためのカソード(電子を発生)の劣化が主因とされています。
 残念ながら対策はなく、蛍光表示管を交換するしか手はありませんが、これまた高価で(私が購入した本体より)かつ入手は容易ではありません。

 今回の表示管リペアの考え方を図示しました。(左上図)

の蛍光表示管の交換は断念、の別の表示(前述の HP53181A の例)は今回は不採用、そこでのLED表示パネルへの交換を実施しました。

 以前入手しておいたFLUKE 8842A 用のLED表示モジュールは偶然にも ebey で見つけました、思いのほか安価ですぐにオーダーした結果が右写真です。
 発送元は Kyiv UKRAINE(キーウ ウクライナ)となっていました、また発送日付は 2022.04.23 となっており、なんとロシアが侵攻した 2022.02.24 の2か月後でキーウ周辺での戦闘があったと思われる時期です。
 この小さなパッケージには「 LED DISPLAY MODULE FLUKE 8840A/42A (DIY KIT)」とありました。

 内容物は、静電気防止の黒い袋に入ったお目当てのモジュール(よく見えないので右上に写真添付)、本体に接続するためのコネクター・ピン、配線材料そしてマニュアルです。






 で、さっそく作業開始です。
 右写真は FLUKE 8842A の内部です、この美しいディスクリート部品が搭載された基板が私は好きですが、今では表面実装部品が多くなりそれこそ景色が良くありません、、、、





 左写真上は蛍光表示管が搭載された全面パネルの裏側で、黄色の線で囲まれた左10ピン、右11ピンの接続ピンの半田を除去した様子です。
 下左は蛍光表示管を用心深く取り外している様子、下右は取り外しに成功した蛍光表示管です。






 そして右写真は新しく取り付けるLED表示モジュールに接続ピンを取り付ける様子です。接続ピンを取り付け終わったモジュールはこれも注意深く本体パネルに半田付けします。
 寸法精度は純正品ほどではありませんでしたが、特に問題なく取り付け出来ました。

 これが完成写真です、流石に蛍光表示管の美しさにはかないませんが、実用的には十分満足できるものでしたし、昼間の明るい部屋でも視認できました。
 LED表示モジュールは蛍光表示管に比して、寿命の点でははるかに優位ですが、駆動電圧が低く(2V以下、蛍光表示管は20V程度)今回のようにそのままモジュールを置き換えるということはかなりの技術力が必要ですし、量産品でもない部品に仕上げる工夫も大変な苦労があったものと思います。

 翻ってウクライナがロシアの一部であった頃は最先端技術の地域であったようで、私の趣味の一つであるカメラについても、かつてドイツには世界に冠たるライカとコンタックスという2大カメラメーカがありましたが、第2次大戦が終結するや否や、ライカは米国が押さえ、コンタックスはロシアが人も含めて設備すべてをウクライナへ持ち去った話は有名です。
 そしてそこで生産されたカメラが右写真にある「キエフ」で、ロゴが CONTAX ではなく KIEV になっていました。

 そんなウクライナにはより親しみを感じています、一日も早く平和が来ますように、、、

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