それでは回路構成について考えていきたいと思います。(その1)でふれたように、真空管の特性はいくつかの電源(プレート、グリッドそして場合によってはスクリーングリッド)を用意すれば測定することができます。過日のブログ「 真空管試験機 Tube tester の製作(その1) 真空管とは、、、、 」参照
そのうちgmについては先回の構想の「2. gm直読機能は必要!、容易に測定したい」を実現すべく、いろいろ調べてみました。
基本的にgmは左 図に示すようにプレートとグリッドに所定の電圧をかけ、さらに1kHzの正弦波をグリッドに加えたときのプレート電流(AC)を読めばいいとあります。
図中の回路にある100Ωの抵抗の両端にかかる電圧(Vac)からgmを測定するのです。
たとえば、Vacが10mVであればgmは 1mS ( 1000μmho )となります。
プレート電流(AC)の測定法には、抵抗値の選択、さらにはトランスをつかって交流電圧を取り出す方法、究極には、抵抗を入れずにワイヤーに直接クランプ型の交流電流計をセットして電流を測定する、、、、などなどありますが、簡易にということで図中で示したように100Ωの抵抗を使いました。
さらに、いろいろ考えた結果、右に示した回路図のようにしてgmを測定することにしました。
参考にしたのは、Steve Bench氏による「 RAT Tube Tester Project 」にあるアイデアです。
これはプレートに供給する電圧は定電圧電源を使い、カソード側に定電流電源を入れて一義的にプレート電圧とプレート電流を与えてしまおうというわけです。この場合グリッドは10kΩで接地しておけば、所定のバイアス値になるようです。
厳密には問題があるかもしれませんが、LTSpiceと、簡単な予備実験でそこそこの結果が得られたので、よしとしました。
また先回の構想の「4. 入力値(電圧、電流)は精度の良いダイヤル式とし、メータでの確認をしない。」については、これも過日のブログ「 定電流負荷装置の製作 」で採用したように、TL431で基準電圧を作り、それと被制御回路からの信号の差をオペアンプLM358で制御するなかで、基準電圧の分圧に、過去に多数ストックしてあった、2kΩ・10回転のヘリポットと、ダイヤルを使用しました。
これらは、かれこれ4、50年前のモノですが精度は健全のようです。(写真左)
今回、少し工夫したのは、ダイヤル直読の部分です。10回転ヘリポットを使うのですが、右図のようにヘリポットをスイッチで固定抵抗と入れ替えるようにすると、レンジの一部分を拡大でき、かつ直読できます。もちろん固定抵抗はヘリポットの実抵抗にあわせて選別しました。
もし基準電圧として4Vをかけたとすると、左側の接続では、3~4V、右側の接続では2~3Vをそれぞれ10回転のダイヤルメモリで直読できます。
これを応用することで、多少レンジの選択・設計には頭をひねる必要がありますが、当初の目的は達せられました。
ということで、必要な構成要素は、
1. プレートに供給する可変高圧定電圧回路 0~350V ~100mA
2. スクリーングリッド用可変高圧定電圧回路 0~350V
3. 定電流回路 0~100mA
4. 正弦波発振回路
5. メータ用アンプ (1kHz増幅・整流・メータ表示回路)
6. ヒータ供給用電源
7. グリッド・バイアス電源
ということになりました。
1. のプレート電圧供給用の定電圧回路を右図に示します。
古典的なアナログ回路ですが、power TR unitには十分耐圧の高いものを使用しましたし、100mAの電流制限回路も組み込んであります。
使用した電源トランスは、2次側が、100-150-200-250-300-350Vとなっていましたので、使用電圧にあわせ、タップアップ/ダウンしています。
2. のスクリーングリッドへの供給電圧はあまり精度を必要としないので、FETを使用した左図のようなものにしました。電圧のソースはスクリーングリッド供給電圧がプレート電圧を超えることは稀なので、プレート電圧から採っています。回路は簡単でよいのですが、発熱によって電圧値がどんどん変わりますので、十分な放熱が必要のようです。もちろんFETは高耐圧、、、、
3. の定電流回路を右に示します。
10~20mAレンジはヘリポットのダイヤルの読みに10を足すことになります。
4. の正弦波発振回路 および 5. のメータ用アンプ(1kHz増幅・整流・メータ表示回路)は、これも過日のブログ「ウイーンブリッジ発振回路」、「メータ用アンプ (その1)」、「メータ用アンプ (その2)」を参照してください。
6. のヒータ供給用電源 についてはトランスを使用するつもりでしたが、当然のことながら、重く、スペースをとるので、一計を案じ、16V-1Aのスイッチング電源をトライしてみました。
供給電力は、直流電流とすることにしましたが、本来真空管はバッテリーで点火していたものですし、徐々に電流値を上げていけばラッシュカーレントも防止でき、電圧をモニターしながらヒータ(フィラメント)の劣化も多少はわかろうというものです。
スイッチング電源はこれも規格に人気がなかったのか、驚くほど安価だったものをいくつかゲットしておいたもののひとつです。
写真に見られるように、電源コードも長く、立派ですしノイズフィルターつきの出力コードも同様です。その後折を見て開腹し、回路をチェックしたところ基準電圧の作成にTL431が使用されており、回路定数を変更することで5~16Vを任意に出力できるようになりました。
もちろん、これ以外の電圧や電流を必要とする真空管には外部から電力を供給できる端子を用意します。
7. グリッド・バイアス電源は一般的な回路を用い、0~-10Vから-10Vきざみで-50Vまで供給できるようにしました。
以上のように回路構成を最終的に決めました。もちろんここまで来るのに多くの実験や改良があったわけですが、、、、
次回はいよいよ製作です。
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