2018年6月13日水曜日

初夏の東北歩き 2/3 (白神山地)

 2日目になりました。今日は朝から気持ちよい青空が見えています。

 今日の予定は、左図のホテル1を出発して白神山地に行きそこで森林散策を楽しんだのち、岩木山をぐるりと時計回りに巡り、途中で昼食を摂ったのちに十和田湖へ向かう、、、、と言うものです。











 右写真は、青森県と言えばリンゴ、その広大なリンゴ畑の向こうに見えている岩木山(おいわきやま)です。


 白神山地の総合案内所(アクアグリーンビレッジANMON)に到着し、いよいよ散策開始です。
 
 左写真の暗門(あんもん)大橋(岩木川の支流暗門川に架かっています)を渡るとユネスコ世界遺産(自然遺産)の白神山地へ近づいていきます。

 橋を渡って右折すると右写真のように暗門川の上流が見渡せ、傍らに世界遺産地域・入口の標識がありました。


よく見ると標識に大きな鳥?が留まっています、、、、日本最大のキツツキの仲間、クマゲラで全長約45センチもありますが、赤いベレー帽には愛嬌があります。



 白神山地は左地図のように、青森県と秋田県にまたがる広大な山林で、法隆寺地域の仏教建造物姫路城屋久島とともに、1993、日本で最初に世界遺産に登録されました。 





 ただし世界遺産に登録されたのは、白神山地の中でも人為的な開発がまったく行われていなかった中心地域約1万7千ha(東京ドーム3600個分)で、白神山地全体では13万haもあり、東京ドーム28000個分にも相当します。
 右は現地の案内板ですが、私たちが居たところは、散策場所と記された右上に赤い丸印のついた場所です。
 そして散策するのは赤丸の内側の2kmを2時間掛けて歩くのです。右図の青色部分は世界遺産の核心地域でここに分け入るのは許可が必要とか、、、、今回の散策は核心地域の外側にある緩衝地域で、それもほんの入口なのです。

 そうはいっても今回の旅行で最も楽しみにしてきた目的が目の前です。
 「世界遺産の径・ブナ林散策道」とある道標を見ながら階段を登って、いざ出発です。




 散策道とはいってもそこは山の中、道は平坦ではありません。

 絶えず起伏があり、歩いている間はなかなか頭上の景色を観ることは難しく、ひたすら足下に注意しての散策でした。

 でも、森林独特の空気であるフィトンチッド(phytoncide)を感じることができますし、木漏れ日が多いブナ林の明るさも体感できました。


 はじめは数少なかったエゾハルゼミの涼しげな声も陽がたかくなるにつれて、蝉時雨になっていきます。

 一息つくために立ち止まって周りを見回したとき、美しい若葉の色に一瞬我を忘れました、、、、


 右写真のようにときおりガイドさんを中心にブナ林についての野外講座が始まります。

 こうして見ると、ブナ林の木漏れ日がよくわかりますし、地表が比較的空いているのもわかります。

 ブナは生長するにしたがって、根から毒素を出すので、一定の範囲にブナだけがほどほどの間隔を置いて残り、ブナだけの林になっていくのだそうです。


 かつてブナは、木+無の漢字「橅」があてられていたように、水分が多く、重いので、筏での搬出が難しく、腐りやすい上に加工後に曲がって狂いやすいため、用途がないとされてきました。


 しかしながら近年では治山治水の観点からブナ林は「緑のダム」とまで呼ばれるようになってきました。

 秋に黄葉が終わり、林床に落ち葉がうず高く積もりますが、その量は、1ha当たり2.3トンとも言われています。

 ブナの葉で集められた雨水は幹を伝い(樹幹流)長時間かかってできた腐葉土の中で、ミネラルを主体とした栄養分をたっぷりと含んだ地下水として蓄えられ、数十年という長い年月を経て地表に湧出してくるのです。

 ブナは保水力の極めて高い木で、樹齢 200年のブナの木が蓄える水の量は本あたり年間トンといわれていますし、土壌が1時間に水を吸い込む量は森林では平均  260 mm、特に良い森林では最大400mm  も及ぶとの研究結果もあり、集中豪雨もモノともしません。



 もうひとつ忘れてならないのが、ブナの実です。

 昔からブナの実は「ブナの実一升、金一升」といわれるほど大事にされ、小粒ながら栄養分に富んでいます。

  ただ、実をつけるまでには5~60年かかりますし、そしてその後は年に一度しか実をつけないのが難点ですが、山に生きる動物たちにとっては大切なものなのです。(左上写真は小さなブナの実)

 約2時間かかって出発点へ戻ってきました。

 売店でりんごソフトクリームが売られているのを発見、おいしくいただきました。







 もうそろそろお昼時も近づいていますが、食事場所までもう少しの我慢です、いざ出発。

 右写真は途中立ち寄った「乳穂ヶ滝(におがたき)」です。今回は水が少ししかなく、糸を引いたようにかすかに見えますが、冬季、この落差33mの滝が上下から氷結を始め、右側(観光案内から)のように柱状になるそうです。

 ただそれは毎年のことではなく、上下連なった年は豊作だとか、、、、


 岩木山をぐるりと廻る環状道路へやってきました。
 この道路にはサクラが植えられており、シーズンには岩木山のサクラの首飾りとなるのだそうです。

 日本100名山のひとつである岩木山は標高こそ1625mではありますが、その独立峰の気高さは青森の人たちにとって精神的な存在であることは十分に理解できました。


 ようやくにして昼食となりました。

 お店の看板に「マタギ飯」とありました(右写真上)、マタギとは猟師のことなので、ひょっとしてクマ、イノシシ、シカなどの肉を使っているのかと興味津々でお店の人に聞いてみましたら、「お客様によってはそういったものを嫌われる方がおられますのでここでは普通のものをお出ししています、、、、」とのこと。

 でもビールとともにかき込んだマタギ飯がおいしかったのは空腹だったからではありません。


 お店に小型の「ねぶた」が置いてありました。

 青森では「ねぶた」、弘前では「ねぷた」と呼ばれ、人形型は両者にありますが、扇型は弘前独特のものだそうです。




 駐車場で、スズランが咲いているのを見つけました。こちらはまだ春なんです。








 散策の心地よい疲れと満ちたお腹のせいで、気がついたら十和田湖に到着です。

 左写真は十和田神社の入口で、ここから「乙女の像」に至る道をなぜか「開運の小径」というのだそうです。

 「乙女の像」は詩人で、彫刻家でもあった高村光太郎晩年の作で、除幕式は1953年におこなわれました。

 氏はこの像のテーマについて「湖水に写った自分の像を見ているうちに、同じものが向かい合い、見合うなかで深まっていくものがあることを感じた。それで同じものをわざと向かい合わせた」とあり、思い入れの深い作品だったようです。

 像の体のモデルは分かっていますが、顔については最後まで布で覆われ誰も見ることができませんでしたが、発表後「智恵子夫人ですか?」の問いに対し、そう思うならそれでも良い、、、、との答えでした。 

 ホテルに到着後、一休みしてからレストランで夕食です。

 夕刻で、徐々に色が変化していく十和田湖を静かに眺めながらのディナーは久しぶりのくつろぎの時間です。





 おいしい料理に加えて、ホテルのサーヴ・マナーも心憎いほどで、ついつい時間をかけてしまいました。




 食後、散歩のために外に出てみました。


 陽はすでに落ちて気温も下がり始めていますが、軽い酔いも手伝って心地よい気分です。

 この分では明日も天気はよさそうです。

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