またまたまた大須アメ横です。團伊玖磨さんの「パイプのけむり」のようになってきました。ブログを振り返ってみましたら、この件でアップするのは今年の3月以来でした。(アップはしていませんが、大須に出かけたのはその間2,3回はあります)
ようやく秋らしくなって空も澄み、すこし元気が出てきたところで名古屋へ出かけました。昼食を終え、家人はデパートへ、私は大須アメ横へ気合を入れてそれぞれ出発です。
何十年も秋葉原や、大須アメ横に通っていると世の中の遷り変わりも、これらの街の風情を通して感ずる事が出来ます。かつては私の興味の領域を一回りするのに何時間もかかったのですが、今ではものの30分もすれば大体が把握できてしまいます。パーツ類はネットでいろいろ手に入りますが、いわゆる「掘り出しもの、ジャンク」などはめったにお目にかかれなくなってきています。
ところが今回、最近(と言っても2,3年まえ)開店した店に立寄ったとき何かが私を呼んでいました。「真空管時代の可変定電圧電源」が展示してあったのです、それも2台。近寄ってみて2度驚きました。間違いではないかと値札を見返しましたがやはり、¥・・・・です、かつてはン万円もしたモノが、、、でも問題はその重さと大きさです。
そろそろ「断、遮、離」を心掛けねばならないのに、、、、散々迷った結果、帰り際に車を店の前に留め、店員さんに運んでもらい、家につれて帰ることになりました。
帰宅後、さっそく逸る心をたのしみつつ、お決まりの掃除と状態のチェックです。筐体は大きいのですが、中味はスペースが多く、かつ使用している部品が一般用(と言っても当時の)ですので緊張感はありません。店員さんが、「一応電圧は見てありますが、ジャンクと言う事で、、、」とささやいてくれたのも心強いかぎりです。
フロントパネルに菊水電子工業株式会社のマークとローマ字のロゴがあります。この会社は定電源装置に強く、私も2,3台待っています。しかしながら今回の装置は、真空管の実験をするために作られたもので、仔細に観察すると、なかなかよく出来ています。スペックなどを調べるためにネットをさがしましたが、もう欲しい情報はほとんどありません。しかたがないので内部の部品の情報などから以下のスペックをまとめました。
モデル 菊水電子工業株式会社製 729B 定電圧電源
高圧直流出力 B 1、B 2 それぞれ DC 0~300V 150mAまで、合計で250mA
バイアス出力 -C DC -0~130V 30mA 程度まで
ヒーター供給端子 5V 2A 、12.6V(CT) 1A 、6.3V 2A
大きさ 43cm X 17cm X 25cm (幅 高さ 奥行き)
重量 約11kg
左;高圧直流、バイアス出力端子
右;ヒーター供給端子
右はカバーをはずして、後方から見た写真です。中味は大きなトランスと、これも大きな真空管が2,3本と小さ目の真空管が3本ありましたが、ずいぶんとスペースがとってあります。
あとは高圧の電解コンデンサー(電圧は450Vでこれがなかなか入手難)と5個のアナログメータが目につきました。
左は正面から右奥を、右は正面から左奥をそれぞれ見た写真です。
左は、この装置に使ってある真空管を並べたものです。左から5AR4、6GB8(2本)、6U8A(2本)、VR-150MTです。 この構成からVR-150MTで得た基準電圧150Vをリファレンスにして6U8Aで出力信号差を増幅し、6GB8で出力電圧を一定に制御しているものと思われます。時間があったら配線を追っかけて配線図を起こしてみましょう。おっと5AR4は高性能の整流管です。
6GB8(2本)、6U8A(2本)とあるのは、B1,B2と出力が2チャンネルあるからです。バイアス用出力は通常、電流が少ないので、定電圧化してないものと思います。
真空管、なかでも定電圧放電管VR-150MTはきわめて珍しく、ツェナーダイオードにとって換わられている今ではほとんど見かけません、と言う事で、作動状態の写真をアップしておきます。薄いピンク色に放電しているのがわかります。
ここに使用してあった、真空管6GB8の構造から、(交換は無かったとして)この装置は1960年代半ばのものだと推定できます。と言う事は私たち青春真っ只中の時代のものでした。この後トランジスタなど、半導体化が進み、真空管の時代が終焉した象徴的な時代です。
4 件のコメント:
この記事で入手経緯が判りました。
仰せのように菊水さんは、
電源製品が良いですね。
この電源についての知識が深まりました。感謝しております。
さすがに大きくて、造りは良いです。最近弱った目で表面実装パーツをハンダ付けしていると隔世の感がありますが、使わないときの置き場に困ってしまいます。
C電源のスペックが30mAとありますがとてもそんなにはありませんでした。(この個体のみ?)
最近では安定化されていないと気になりますので改造しようかとも思っています。
http://www.kikusui.co.jp/kiku_manuals/NUMERIC/729A_J.PDF
匿名さん この記事の729Bのお兄さんである729Aの貴重な資料のPDFありがとうございました。
基本的には設計思想は引き継いでいると思いますので大変参考になります、重ねてお礼申し上げます。
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